頂き物
□はなみずき様からの400hit記念
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「今日はおとなしいっスね。」
確認を終えた書類を、トントンと机に落として揃えクリップで止める。引き出しから専用の封筒を取り出したところで、隣の同僚に声をかけられた。
顔だけそちらに向けると、彼も顔だけで隣の部屋へと続く奥の扉を示した。
上官の個人執務室。
「そうね。」
普段、何だかんだと言い訳をみつけてはさぼろうとする上官が、今日は朝執務室に入ったきり出てくる気配もない。時計を見ると、一一三○時を回ったところだった。
「これ総務に提出に行くから、様子を見てくるわ。他に提出するものある?」
「いえ、俺はないっス。」
「僕も大丈夫です。」
「あっ、中尉。これもお願いします。先週の合同訓練の報告書です。」
それぞれの返事を聞き、ブレダ少尉から書類を預かり手持ちのものと合わせる。
「中尉、ここ残りやっとくんでそのままお昼行ってきて下さいよ。午後イチで会議っスよね。」
「そう?じゃあお願いするわね。」
今日のように午後一番で会議の入っている日は、昼食をとる時間を確保出来ないことも多い。同僚の心遣いに感謝して、ボードの名前の下に『休憩』のプレートを下げ、廊下に出た。
ほんの少し歩いて、またすぐ隣の扉を開ける。応接室を抜けて、奥の扉が大佐の個人執務室だ。先ほどハボック少尉が示した、“執務室”と“個人執務室”を直接繋ぐドアをくぐれば早いのだか、 それは大佐が移動するためのものであって、近道ではないのでそうはいかない。
トントントン―。
その両開きの大袈裟な扉をいつも通りノックするが返事がない。
まさかこんな日まで逃げられたかと思いつつそっと扉を開いた。
「失礼します、大佐―。」
と、見慣れた黒髪が執務机に突っ伏しているのが目に入った。
(寝てる?)
近づいてみると、僅かに肩が揺れていて、どうやらうたた寝をしているらしい。机の上には、ほとんどの書類が朝の状態のまま置いてある。午後から会議だというのに、一体どうするつもりなのか。
小さく溜め息をついて。
「大佐!起きて下さい。た‥っ!?」
起こそうと、机越しに肩に手をついてどきりとした。
軍服越しにもわかるほど、体が熱い。
(熱―?)
「‥ん、‥中尉。」
ぼんやりと開けられた目が、いつもより気だるそうに見えるのは、寝起きだからというだけではないだろう。
彼は起き上がると、机に片肘をついて頭を押さえた。