頂き物

□時雨様からの4300hit記念
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私の主人、エリオが居候しているこの家。まぁ、もはや私たちの――いや、私の家と呼んでも何の問題もないこの家に。
 ロイ・マスタングが帰ってきた。

 おい、誰だ今私のことを「紳士(笑)」なんてほざいた奴は。殴るぞ。
 私ことエネが今回の語り手らしいが、面倒臭いことこの上ない!

 ……そういえば、誰も彼のことを「ロイ」とは呼ばないことに気づく。
 初期の呼び方が定着しているからだろう。エリオですら「大佐」「童顔」「女たらし」だし。

 で、まぁそれは今回関係なく。
 そんな考えごとをしている間に、カルトが彼を寝室に連れて行った。

 夜も遅い。何故今日は、ライすらもこんな深夜に起きているかというと、賭けをしていたのだ。

 大佐が帰ってくるまで起きようと(寝てしまったが)していたエリオが、「大佐は何時に帰ってくるか」を予想しろ、と。
 勝者には、「誰かに一つだけ『何でも』命令して良い権利」が与えられる。「何でも」だ。
 そして、まぁその結果、皆が起きていたのである。

 ちなみに勝者はソルだった。あの地味な男だ。どうせ『渋いポフィン食いたい』とかそこら辺のことだろう。

『……あれー?』
『あら、ライ。どうしたの』
『サナお姉ちゃん、これー……』

 声の方向に首を伸ばすと、ライが酒瓶を抱えていた。
 ……うぅむ。
 何度見ても、彼が可愛らしいとは思えない。全く思えない。
 そもそも男が可愛らしいという前提が理解不能だ。せめて彼が♀ならば、少し共感ができたものの。

『あらあら、お酒じゃないの』ラキが、興味津々な顔で近寄る。『どこにあったの?』
『んとね、大佐の鞄にあった』
『漁ったの? 駄目じゃない』
『うー……お鼻、ひくひくしたもん』

 何が『ひくひくしたもん』だ。
「スピードスター」をぶつけてやろうかと思ったがぐっと我慢する。そしてその勢いのまま、左側の空色に目を向けた。
 真面目で凝り固まったようなチルが、うつらうつらと眠そうにしていた。が、思わぬハプニングにはしゃぐ(主に精神年齢高めのポケモンが)彼らの声で、意識が浮上しかけているようだ。

 ……ふむ。
 あ、カルトが帰還した。

『……何してるんだ』
『カルトお兄ちゃん、これ何?』
『酒だろ』

 何という正論。
 彼はライの純粋な疑問に答えて、床の酒瓶を取り上げる。

『あー!』
『酒……』
『うわカルトマジKY』
『信じられん』
『やめて、返して』

 ブーイングがあった。そりゃそうだろう。皆、酒が飲めることに期待大だったのだし。

『何だよ、これは大佐のものだろ』
『違うもん。大佐が酔っぱらって店から持ってきたやつだもん』そうなのか?
『……じゃあ、これどうするつもりなんだ?』
『決まってるじゃない』

 あ、ラキが説得にかかった。
 よし、もう大丈夫だろう。
 何しろ彼女の根性といったら、……思い出したくもないくらいだからな。

 さて。場を整えるため、私も尽力しよう。

『でもねぇ……。ポケモンがお酒って、良いのかしら?』
『何をおっしゃいます』

 サナにニコリと微笑む。

『ルージュラというポケモンをご存知でしょう? 彼女は恋い焦がれたルカリオを射止めたかった。
 しかし自らの容姿を気に入ってくれるだろうか、気になるし怖くて告白もできぬ! そこで彼女が用いたのがお酒なのですよ』無論、嘘である。

 しかしサナはカルトに恋い焦がれている。今の例え話は露骨すぎたが、彼女にはこれぐらいがちょうど良いのだ。

『……な、なら……良いでしょうか。べ、別に誰かを射止めたい訳では、』
『分かっておりますよ』

 さてさて、宴を楽しもうか。
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