頂き物

□時雨様からの3600ヒット記念
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『だぁれが特攻お化け(笑)だぁああーッ!!』 『そこまで言ってないですぅうーっ!!』

某鋼の錬金術師の口真似をしたシャンデラ がトゲキッスに当たり散らす光景は珍しく、 通りかかったラグラージは足を止めて声をか けた。

『やっ、どしたの? 荒れてるねー』 『ちょっとクリフ、あんたも思わない? 最 近さぁ、エリオが構ってくれないんだよつま んない! 面白くない!!』 『そんなこと言ってもねぇ。アオイちゃんは 赤ん坊なんだから、どうしても優先順位は変 わっちゃうでしょ』

ひょんなことからエリオが拾ったタマゴか ら生まれたチコリータに、彼女は毎日てんて こまいの日常を繰り広げていた。 ラキの熱心な指導により授乳はできるよう になったのだが、失敗するとチコリータは嘔 吐したり泣き叫んだりと、かなり神経を消耗 してしまう。 何もできない癖に邪魔なんじゃボケェ。と いうのが、最近のシャンデラの感想なのであ る。

『だいったいさー、チコリータとか何なんだ よ。種族値調べてよそして比べてよ。僕が圧 倒的に強いのに!』 『いやいや、それ言ったらオシマイでしょ』

――そして、次のトゲキッスの一言が壮大 なドラマを引き起こすとは、誰も知らなかっ たのだ。

『じゃあ、PTの中で一番強いのって、誰なん でしょうか?』 『僕でしょ』

真っ先に反論したのはシャンデラだ。

『僕に決まってるじゃん』 『おっと聞き捨てならないね。オッサンのタ イプは水と地面! シャンデラキラーと名高 いんだぜ、即興だけど』 『何? 何の話よ、クリフ?』 『やかましいな、小童共が』

更に、ラッキーとハガネールが現れる。そ して、無言ながらもアブソルまで顔を出した 。 トゲキッスの顔が蒼白になる。 ――嫌な予感しかしない! 急いで話題を 変えないと!

『そ、そういえばあそこにおいしいお菓子屋 が』『最強? 俺様に決まっているだろうが 』 『あのお菓子屋、クッキーが』『……俺をな めるな』 『クッ』『ピンクの悪魔の本性、見せてあげ るわ』 『……私だって! 白い悪魔とか巷で呼ばれ てるんですからっ!!』諦めたようだ。 『そうと決まれば、トーナメント表組まなき ゃね。オッサン張り切っちゃうぞー』 『……どうにでもなれ』

ロイ宅で彼らの主が赤子をあやしている頃 。

ここで六匹のポケモンたちの心に、炎が燃 え上がったのだった。

+++

『さぁ始まりました、空気なポケモン限定で の最強決定戦! 実況は俺、ニドキングと――』 『解説のエネです』 『で、お送りしたいと思います。さぁ、スタ ジアムではシズがグラウンド整備を行ってい ます。 なお、今回は大佐に無理を言って練兵場を お借りしています! 大佐マジごめん! そ して、サナとチルが「ひかりのかべ」ライと カルトが「リフレクター」を張ることにより 、観客への被害は最小限に留めています。 さてエネさん、有力候補はどのポケモンだ と思いますか?』 『そうですね、とりあえずシズは位相応の働 きをしていると思います本当に無様です』 『聞いてたか俺の話』 『そんなこと言ったってどいつもこいつも種 族値は誇れるものでしょうよ。まぁガルじゃ ないですか? 固いし強いし』 『(自分が種族値低いからってひがむなよ… …)そうですか、では』『誰もひがんでませ んよ?』『ギャアアァァァァッ!!』 『……うっさいなぁ』

「控え室」と殴り書きされた部屋に待機して いる六匹のポケモンのうちの一匹、シャンデ ラが呟いた。 この部屋に居るのは、一回戦のシャンデラ とアブソル。 アブソルはコキコキと節々を動かし、久し い実戦への動きは鈍っていないか調整してい た。しかしシャンデラは呑気に実況を聞き流 し、余裕の表情だ。

『……随分と余裕だな。タイプ相性は俺の方 が有利だぞ』 『分かってるっての。それでも、僕の方が確 実に強い』 『………………』

アブソルは口を開き、やめた。

シャンデラはただ、ゆらりゆらりと揺れる ばかりだった。
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