中編小説

□鷹宮高校 変人部
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チャラ男奮闘活劇




「舐められたら終わりだ(色んな意味で)」

と、勝手にヤンキーはびこるオスくさい男子校の恐ろしさを想像して恐怖した俺は、受験が合格した後、空手部とか柔道部とかのクラスメイトにすぐにつかえそうな技とか体の鍛え方を教わって肉体改造を図った。


教わった3分の1しか技を習得できなかったけど、なんとかなる。
腹筋も、入学式に入るまでには何とか、うっすら、良く見たら、割れていた。

大丈夫、何とかなる!


そうして初めて学校の門をくぐった俺は、言葉を失う。

・・・・すごく、キレイでおしゃれな高校でした・・・・

制服も、さわやかな灰色のブレザーに同色のスラックス。靴は茶色とか黒とか白い色を指定されていて形は自由に選べるし、シャツの襟にはおしゃれな校章デザインを基にしたプリントが入ってるし、ネクタイピンもそれとなくハイセンスだ。
ネクタイは学年ごとに色違いで、一年が海老茶色(暗い赤) 二年が抹茶色 三年が紺色だった。

制服がおしゃれだったのでピアスを開けてみた。俺も自分のキャラの殻を破る勢いで心機一転がんばろうと思ったからだ。

ちなみに頭髪の色は、今は紅茶色に落ち着いている。深い赤だ。ネクタイと合わせたと気付いてくれる気の合う友達が出来ると嬉しい。
・・・中学時代は友達はいなかったし・・・


「えー、じゃあ出席番号順に名前と、あとなんか面白いこと言え」

「「「「ええええー!!!」」」」


担任の菅原は早速無茶振りをしてきた。恐ろしい男だ。
ぼっさぼさの黒くて長い髪は寝癖なのかあっちこっちはねまわってるし、ヒゲが3日ほど剃ってないみっともない無精ひげだし、なんか眠そうだし大丈夫かな・・・?と思ってたらこれだ。


「鈴木 将人だ。よろしく。 面白い話・・・。そうだな、モーツァルトの作曲した曲には俺の尻をなめろ という作品がある」


「「「「へえー!!!」」」」



前の席の奴が、面白いのか豆知識なのかどっちかわからない話を終えて、ガタリと姿勢良く椅子に戻る。

って、次は俺だよね!!

ガタタっと慌てて立ち上がった俺は、クラスメイト+もっさり担任の視線を独り占め。

ひああああ!やめてみないでたべないで!!

「えー・・・あー皆様の清家。清家 卓巳(せいか たくみ)でございまーす。みんな気軽にタクミって読んでねー。っと、面白い話はねー」

やばい。緊張しすぎて、何故か中学の保健の先生のゆるい口調が乗り移ってる!!なんで!!?

「ちょっと前まで、俺の髪はまっ黄色でねー
(40歳オーバーの)お姉様達と遊んでたら突然頭わしづかみされちゃって、なにしてんのー?ってびっくりして理由聞いたらさー。ズラじゃないのってー。でも、その人あんまりにも(パートで鍛えた握力マックス)引っ張る力が強すぎて、リアルに前髪持ってかれちゃって、ちょっとの間カッパカッパって(小学生の)カワイコチャンにからかわれちゃったからさー緑に髪染めてやったの。そしたらさー」

「わかった、お前のそれは面白い話じゃなくて武勇伝だ。滅べリア充」

「・・・はえー?」

俺の面白い話なんて、無駄にカラーチェンジが多すぎるこの頭髪ネタしかないのに、けだるげに担任に中断されてしまった。
しかもリア充どころか、中学時代はぶっちぎりでボッチ生活をじめじめと送っていた対極の存在の俺だ。くそ、滅べリア充・・・


そして、自己紹介が終わって担任はノロノロと教室を出て行く。
今日はこれで授業は終わりだ。


「清家さ・・お前マジ、見た目だけじゃなくて、中身もチャラかったんだな」

「えー?チャラくないよー・・ぷう」

後ろを振り返って難しい顔をしてる鈴木君。
俺は極度の緊張により、母親の人格が何故か乗り移って、リアクションもそのまま忠実に再現されている。

「やめろ。かわいくない」

「ぷー」

なんか、俺の話に食いついてきている鈴木君とどうにか友達になりたい俺は、今年最大のすごい勇気を出した。

「なあ、俺の事は清家じゃなくてタクミって呼んで欲しいなー?」

「あーあーわかったよ。タクミ。俺は将人で良い」

あ こ が れ の な ま え よ び

キター!!!

「うん、ふへへーまさとー」

「だらしねえ顔だな、おい」

男らしい黒髪の短髪に、凛々しい太い眉。
ちょっと呆れてる顔がスゲエ大人っぽい鈴木君・・・じゃなくてマサトをさっそく友達認定。
あとすることは一つ。俺はサッと携帯を出して、全力の上目遣いでガンガンアピールする。
母親の得意技のひとつで、相当面白くて笑えるのだ。これで将人の笑いをとって親交を深めるぞ!

「早速メアド交換かよ。流石だな」

・・・・スルーされた。

しかも何が流石か良く分からないけど。
でも、これで俺の初めての友達アドレス一つゲットー!!

やばい。
マジなんとかなるみたい。

あのダメバツ3警備員に感謝してもし足りない。


少しの勇気で、もっと違う世界が見れそうな、そんな予感がした。


その日は嬉しすぎて、俺に乗り移った母親のキャラと中学の保健の先生のゆるい口調が抜けずに、ずっとキモイリアクションばっかしてたら、周りのクラスメイト3人のアドレスをゲットできた。

キモキャラすごい!!この調子でがんばろう!
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