中編小説

□鷹宮高校 変人部
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チャラ男誕生秘話





「何考えてるのかわかんない」

茶髪のショートカット、ツリ目気味の大きな目の溌剌としたダンス部の俺の彼女。

対する彼氏の俺は、泣き虫で小心者だった。
でも、初めてできた彼女にみっともない姿を見せたくなかったプライドだけは持っていた。

「ねえ?なんで怒んないの?」

彼女が俺じゃない男と楽しげに話してるのを見かけて、泣きそうになった俺は、ひたすら仏長面で興味なさげに振舞ってた。
そうやって自分の気持ちを抑えるのに精一杯になっているうち、彼女との距離がどんどん離れていった。

「ねえ何か言ってよ!結局私だけ・・・空回りみたいでバカみたいっ」

ある日、彼女に話があると言われ、放課後。
誰も居ない教室。夕暮れ。野球部の声。ブラスバンド部の演奏が遠くに聞こえた。

パン!

と頬の上で破裂したような音と、衝撃。
もう既に頭は真っ白で、胸を鉄の棒で何度も刺されるような痛みに耐えるのに必死だった。


「別れよ。」


キーンと耳鳴りがする中で、何故かその声が頭に突き刺さってきて、俺は必死に何かをこらえながらうつむく事しか出来なかった。


そして、教室が真っ暗になってもまだ身動きできない俺を見つけたのは、学校の警備員さんだった。




■■■■■



「うううっマジ緊張するー」

何度も読み返したメールをもう一度見てから、頭を軽く振った。

保存ボックスに大切にしまってるメール。

相手は中学時代にお世話になった警備員さんだ。

内容はそんなにない。

”なんとかなるさ。好きにやってみな!”

たったそれだけの簡素なメールが俺の生きる糧になってた。

泣き虫で、小心者で、後ろ向きで、受身で。
マイナスの想像力ばっかり優秀な俺は、彼女にフられた日、世界が変わった。

五十過ぎの警備員さん(須田さんというのだが)その人に何故か可愛がられて、いろんな悪いことを教えてもらった。
須田さんはバツ3で、今は一人暮らしをしているそうだ。明るくて、笑う声がバカみたいに大きくて、がさつでヒゲズラで熊みたいな人だ。
人柄はなんていうか、無茶苦茶だった。
生活感が無いというか、計画性が無いというか。突拍子もない事をするというか。

受験でどの高校に行くか悩んでる俺にその人は言った。

「なあなあ!ゼッテー無理だと思うような高校に希望出してみろって!」

バカじゃないの。
何無責任に人の人生で遊ぼうとしてるの?バカじゃないの?

って。その頃には無理やり須田さんに金髪に染められてしまってガサガサの頭を振り乱して抗議したのだったが。

「じゃあ、俺と勝負しようぜ!タクミが負けたら俺が高校決めてやる!」

と勝手にベーゴマ対決を所望してきた。
何なの馬鹿なの。ベーゴマって何。

そして俺は完敗した。


須田さんに書かれた進路希望に書かれた高校の名前は、三つ全部見たことも聞いたこともないものだった。
でも絶対これ名前みて面白そうだったから決めたんだよね?そうだよね?ってのばっかりで。


俺は、やけくそになってそれを担任に提出した。
その内容を見た担任の微妙な顔は一生忘れられない思い出だ。
そして、クラスメイトからも俺がとうとう気がふれたとからかわれた。
ちなみに、俺が須田さんに無理やり金髪にされた次の日は清家(せいか)がとうとうグレたとか言って大騒ぎした。うちの学校頭髪自由だし制服もないじゃんか・・・。



そして、その三つの中の一つ。

「鷹京遠藤川宮大学付属総合経営高等学校」

略して鷹宮高校に合格してしまった。


学校名が長い。長すぎる。


そして、恐るべきことに、この高校は男子校だった・・・・
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