長編小説

□一章・悪魔四天王襲来
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「ヤバイ・・・足痺れ過ぎて感覚なくなってる・・・」

俺は座禅を組んでいた。
理由はひとつ。でっかいトカゲ、じゃなくドラゴンがどうやったら人間サイズに縮めたのか物理的に考えるためだ。

でも、結局分からなかった。


「与作はまるで生まれたての小鹿のようだな。足をつついて良いか?」

「ドエス!千田のドエス野郎!」

キツイ目を楽しそうに細めて手を差し伸べてくるのは、みんなのオカン、千田華月・17歳だ。
黙っていたら、鋭い目つきとデフォルトで口角が下がっている為に、怖い雰囲気をかもし出す、そんな男だ。

でも、しゃべると気さくだ。

「無理、ちょ、マジ無理」

「・・・まじで・・・・」

あと、その友人の千田の横にいるでっかくてドラゴンもとい白い甲冑男。
なんと、これがすごいイケメンだ。
なんか、イケメンとかいうレベル超えてるけど俺イケメン以外に男を褒める言葉を知らないので、とにかくイケメンだ。

「このトカゲ、いやドラゴン、なんかマジでマジでばっか言ってるよな。あれかな?オウム的な?」

「いや、なんか名前教えてもらった」

「マジで!?」

「マジで」

「・・・・まじで」

俺が座禅を組んで瞑想している間に、千田と甲冑男はいつの間にか友達になってた。
すげえフレンドリーな空気がバンバンかもし出されてる。
マジ千田ぱねえ。

「で、何て名前なんだ?」

「     だ」

「ん?」

「            だ」

「ん?んん?」

「あれ?」

ぱくぱくと口を開く千田。

「何て名前なんだ?」

「えっと。ちょっと待てよ?     だ」

「んんん??」

ちょっと眉を寄せた千田は、隣の甲冑男を見上げて、またぱくぱくと口を開いて首を傾げてる。

「こいつの名前ってまさか・・・パクパク君?」

なんだそれ。超可愛い名前だな。イケメンなのに。

「違うぞ。俺はちゃんと声に出して言おうとしてるんだ・・・・      むむ、」

「やべえ千田がなんかやべえ・・・」

口ぱくぱくしてる千田やべえ。マジ面白い。

「与作、俺、今、凄い名案を思いついたぞ」

しばらく面白そうにぱくぱくしてた千田が、俺の前にしゃがみこんだ。
そこらへんに落ちてる石を拾って、ガリガリと地面に文字を書き出した。

「千田マジ天才だな!」

「まかせろよ」

「えー あーしゃーせりおすー」

「そうだ!」

「おおお!こいつは     ッて名前だったのか!!・・・・あれ?」

「ん?まさか、与作・・・・お前もか?」

あーしゃーせりおすあーしゃーせりおすと確かに声に出そうとしてるのに、声が出なくて結局パクパクで終わる。

俺と千田は真剣な目で見つめあい、ごくりとつばを飲んだ。

「すげえな!超常現象まじぱねえ!!」
「魔法か?魔法なのか?」

でっかいトカゲになんか知らないすげえ現象。
マジここ日本じゃなくね!!??

俺が興奮してバンバン千田の肩を叩いてると、甲冑男に腕を取られた。

「・・・むい」

「むい??????」

超低音美声が、なんかすげえ可愛い言葉を言った気がする。やべえ、ドラゴンマジやべえ。

「ちょ、千田。お前ドラゴン語分かるんだろ?むいって何だ?」

「むいはわからないな・・・あと、結局”マジで”もきっと俺らの使う”マジで”とは意味が違う気がする。・・・・俺の勘だけど」

「お前の勘、すげえな。冴えまくりだな」

「まじで・・・・・むい、」

結構乱暴に掴まれた腕をほおり出された俺は、ドラゴンの力に恐れ慄くのに忙しかった。あと、「マジでむい」っていうコンビネーションの不思議な響きさったらない。

それにしても、マジでがマジでって意味じゃなかったら、このドラゴンにとってマジでってどういう意味なのか気になってきた。
甲冑の構造と同じくらい気になってきた。
でも、今の俺の力ではドラゴンの甲冑を引っぺがすことが出来ないので、ドラゴンの中身については今後の楽しみに取っておこうと思う。
・・・・カメの甲羅みたいな構造でなければいいと、切に願いながら。

「なあ千田。お前なんかアイテム的なもの持ってないの?」

「ん?ちょっと待ってろよ」

千田は立ち上がり豪快にジャケットを脱ぎだした。

「っっ!」

やべえ、ドラゴンが千田超ガン見してる。
すげえ、ドラゴンめっちゃ千田に興味しんしんだぜ・・・

で、千田のほうはドラゴンの目からビーム出しそうなガン見をものともせず、ジャケットを逆さにばっさばっさと振ってる。だけど、何も落ちてこない。

「ちょっとそこで、ジャンプしてみろよ千田ァ」

ヤンキーっぽく要求すると、千田は「勘弁してくださいよ」と言いながらぴょんぴょん軽快に飛んだ。
やべえ、ドラゴンまだガン見してる。
千田いつか穴開くんじゃね?

「・・・、残念ながら俺は何も持ってないみたいだ」

「お前は持ってるだろ?千田・・・」

「?」

若干すまなそうな顔をしてジャケットを着なおす千田を残念そうに見てるドラゴンを見ながら、俺は、俺が出せる最高のイケメンボイスで言ってやる。

「お前は持ってるはずだぜ?男気ってやつを・・・な、」

「与作くせえ。マジくせえ」

「まじで」

やべえ、ドラゴンの マジ に対する執着心がマジやべえ!!
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