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□第4話
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序章 第4話 「死に際に」








今日も一日が終わる。

いつまでお母さんと

一緒にいられるのかな?

まだ別れたくないのに。














お母さんとの思い出を

きれいなもの

にさせておくために

町を出たところの雑木林の

隅のほうに

穴を掘りそこにお母さんを

静かに埋めた。











あれから何日過ぎたのか

わからないけれど

激しい目眩と頭痛でそろそろ

気を失いそうだ。

それもそうだろう。

飲まず食わずでいたのだから

そろそろ私の体も限界に近い。












人間とは不思議なものだ。

どんな状況にあっても

生理的欲求は正直。










でも私は一人では

生きていけないし

生きていたくもないし

生きてゆく価値すらない。

つまりもう死ぬしかないのだ。










母が自分の命を無駄にしてまで

守ってくれた命。

確かに死ぬのは少し怖い。

でも私は一人ぼっちで

こんな世界にはいたくない。

こんな娘で、ごめんなさい。

私はもうすぐお母さんの

ところに行きます。










「・・・か・・・さん・・・。」


もう涙なんて枯れている

とおもっていたが

私の目からは

一筋の涙がこぼれていた。

お母さんのお墓の前に座って

お母さんとの思い出を思い出して

しんみりとしていた。











シュッ!



そのとき、

鋭い殺気と共に

私の足元に何かが刺さった。









それはトランプのカードだった。








数ミリずれたら私の足に

サクッと刺さっていただろう。

少し寒気がした。












恐る恐る後ろを振り返ると

ピエロメイクでオレンジ色の髪色

をした男がいた。

右手にはトランプを持っていた。











「やあ、はじめまして◆」(ニコリ









突然のことで理解ができない。

墓の前に座っている少女に

凶器を投げつけて

ニコリってどういうこと

なのだろうか。






新手の快楽殺人犯か。

まあ殺人鬼だったらそれで

都合がいい。










「・・・殺してください。私を」









男は不思議な顔をしていた。










「死にたいの?君◆」






「・・・殺して。」







「戦意のないものを

殺すのはちょっと気がひける

んだけどなぁ・・・◆」








「・・・お願いだから・・・はやく。」








「そんなかわいい目をされたら

殺したくなっちゃうなあ・・・◆


でも僕は君を殺したく

ないんだよねえ◆」









「・・・なぜ・・・?」









「君は、

青い果実だ◆」ニヤリ








「・・・?」





予想もしていない

言葉が返ってきた。











「君の果実、僕が立派に育てて

あげるよ◆」











「・・・え。」







この人はなにを言っているの

だろうか。

つい2、3分前に出会って

私に凶器を刺そうとして

その上私を育てると?

この男の意図がまったく

読めない。

というよりどこから

つっこめばいいのか

わからない。











「・・・あのその前にまず

あなたは誰なんですか?

はじめて会いますよね?」










「うん◆

ぼくはヒソカ◆」










「ヒソカ・・・さん・・・。

果実の意味とか

よくわからないですけど

私を育てるって・・・?」












「君さあ、今すごく

もったいないんだよね◆」








「・・・もったいない?」










「君、強くなるよ。

君のオーラ見ていると

すごい興奮しちゃって

本当なら今すぐに殺したい

ところなんだけどね◆

でも今はしない◆」









どうやらものすごいど変態

に出会ってしまったようだ。

私の人生って不運すぎるのかな?












「・・・もったいないとか

あなたの考えは

よくわからないですけど

私は今まで平々凡々と

過ごしてきました。

私自身が言うのもなんですけど

こんな普通のどこにでも

いそうな小娘なんか育てる価値

もないと思いますよ・・・。

さっきも言ったとおり

私なんか殺せばいい

じゃないですか。

さっきの視線も

気が失いそうになるほど

すごく不気味で狂気的な

感じがしました・・・。

私の勘みたいなものですけど

あなたはとても強いですよね。

だったらこんなめんどくさい奴

なんかさっさと

殺してしまえばいい

じゃないですか!」












「価値という言葉は

自分でははかることができない。

他人から見て価値は存在

するんだと思うけど?◆

でも・・・◆」



(僕、あれでも絶状態

だったんだけど◆

わずかに殺気が

漏れていたかな?◆

でもやはり僕の目

に狂いはなかった◆

ますます気に入ったよ◆)












「ふふ・・・◆

おかあさんともうお別れは

済ませたかい?◆」











「ええ・・・。

あの世で会えますし。

やっと殺す気になって

くれたのですね。」







「ふふ・・・◆

うん。

じゃ、いくよ◆」







ヒソカの手がゆっくりと

頭上に上がりすばやく

振り下ろされる。

それをぼーっと眺める。









(これで、もう私は死ぬんだ

あっけなかったな。

私の人生)











しかしそこにいたはずのヒソカは

一瞬でどこかに消え

同時に私の首の後ろに

鋭い手刀がヒットする。








(!? 

な・・・んで・・・。)








私はばたりと地面に倒れて

ぐにゃぐにゃと歪む視界の中で

後ろに立ってニヤニヤしている

ヒソカを睨む。










が、途中でぷつんと

意識が途切れてしまった。










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