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□北郷紀
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作られた外史――



それは新しい物語の始まり


終焉を迎えた物語も、


望まれれば再び突端が開かれて新生する。


物語は己の世界の中では無限大




そして閉じられた外史の行き先は
ひとえに貴方の心次第――。

さあ、外史の突端を開きましょう。






後漢末期 とある密林の中でおおよそこの時代にそぐわない光り輝く服を着た少年が
たった一人で倒れ込んでいた。

少しずつ意識が覚醒していき
目が覚めると少年は森の中で倒れているのに気づいた。
「!?どこなんだ。ここは……」
少年はこの景色に全く見覚えがない。彼が寝たのは自宅の寝具、そしてこのような場所は全く見覚えがない。
何より嫌な予感がするのだ。鼓動は早くなり冷や汗は止まらない。

思わず立ち上がり辺りを走り回る。
自分の知るものが何か一つでも見つかれば、自分がどこにいるのかわかるかもしれない。
こわばった表情で必死に手がかりを探すが景色は一向に変わらない。
周辺一帯が森林のようだ

「……ハア…!!…ハア…!!」
少年は息が更に荒くなっていく。
頭がおかしくなりそうなのだ。見たこともない景色。
自分の記憶からは考えられない所で目を覚ました驚愕。あらゆる負の感情が彼を
追い詰めていく。




そんな時
極度の緊張と恐怖で感覚が鋭敏になっていた彼の耳に、遠くからこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。
耳を済ましてみれば足音のように聞こえる。

やっと人を見つけたのだ。その人にここがどこか聞けば家に、自分の知る場所に帰れる。
恐怖から安堵へ変わっていく。
思わずほっと胸をなでおろした彼は立ち上がってその足音のする方向に走りだした。
そんなに遠くはなかった。
三人ほどの人影が見えてきた所で彼は声を上げる。

「すいませーん!!ちょっと聞きたいことがあるんですけど!!」

だがその三人組に近づいていくうちに疑問が浮かんでくる
彼の知る一般人の服装とは全く違う服、三人組が自分を視界に入れた時に見せた
嫌な笑み。そして彼が最も驚愕したのが三人組の真ん中にいる男が腰に下げている刀だった。

「!!そ、それ……」

「よう、兄ちゃん。高そうな服着てるじゃねえか。」

「そうなんだな。高そうなんだな。」

「死にたくなかったら金目のものは置いていきな。
 そしたら命だけは助けてやってもいいぜ。」

「命って…!?なんで刃物なんか持って……」

恐怖でそれ以上声が出ない。当然だろう。彼の"いた世界"の常識では刃物を持って
外を闊歩するなんてことはありえないのだから。


恐怖で腰が抜けて、それでも逃げるために後ずさる。



「なんだ?逃げんのかよ。仕方ねえ。おい、やっちまいな。」



真ん中にいる男が隣にいる大男に刀を渡しそう命じる。



大男は何事か言ったあと刀を振りかぶるが
彼は恐怖で何も言えない。とっさにうでで顔を守ろうとする。


本能のようなものだろう。


死を覚悟したそんな時


「待て!!」


女性の怒号が聞こえた。


聞こえたと思ったら信じられない速度で男たちに走りより斬り殺してしまったのだ。


危機から脱したことによる安堵。そして目の前で助けてくれたとは言え殺人が行われた、それも同時に三人も。
数々の衝撃の出来事に彼の心は耐えられるはずもなかった。


助けてくれた女性がこちらに向かって何かを言っているのを見ながら


彼の意識は途切れていった……

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