All NIght Long
□chapter12
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いったい何が起こったのだろうか。そしてどうしてここに彼がいるのか。
てっきり目の前でのた打ち回っている大蛇こそ“彼”であると思っていたのに。
漆黒のローブを翻し、杖を構えた右手を真っ直ぐ突き出したまま微動だにせず立ち尽くしているのは、まぎれもなくセブルス・スネイプであった。
目を見張ったまま硬直しているノーラの目じりからポロリと涙が転げ落ちる。
本当に、本物なのだろうか。大体彼は自分に向ってなんと言った。
よくやった―――?
普段のスネイプの口からはおおよそ聞くことの出来ないであろう言葉に、彼女は増々頭が混乱してゆくのを感じた。
そしてそれと同じくらい、スネイプによって吹き飛ばされた大蛇も取り乱しているようだった。
「貴様何者だ!どうやってここへ……!」
「化け物に名を名乗る義務があるのかね。冥土の土産にというならば話は別だが」
「黙れ!誰にむかって口をきいているつもりなのだ、下賤の者よ!」
黄金の両目をギラギラと燃やして、飛びかかってきた大蛇にノーラが小さな悲鳴を上げた。
「セクタムセンプラ!」
しかしスネイプが唸るように耳慣れない呪文を唱えた途端、鎌鼬のようなものが鱗を切り裂き、驚いたことに巨大な体は地響きを上げながら地面へと倒れ伏してしまった。
危うく長い胴体の一部に下敷きにされそうになったノーラの腕をスネイプが引っ張り上げる。
「――…し、死んだんですか?!」
「まだだ……しかし時間の問題だろう。見ておけ」
そう言って彼女から離れ、再び大蛇へと近づいて行ったスネイプが杖を振る。
「Revelio(暴け)」
すると見る見るうちに蛇の身体が縮始め、黒い鱗剥がれ落ち、代わりに人間の手足のようなものが生えてきた。
血だらけで横たわるその人物の姿をハッキリと見たノーラが思わず、金切り声をあげる。
「ユーベール!」
それが恐ろしい大蛇であったことも忘れて、彼女は彼の傍に駆け寄ったが、後ろからそれをじっと見据えているスネイプもそれを止めようとはしなかった。
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