All NIght Long
□chapter9
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三人掛けのソファに座ってソワソワと落ち着きなくノーラを待っていたハリー達三人は、談話室の扉が開いた瞬間微笑みかけた笑顔そのままに硬直してしまった。
なにしろ普段は櫛できちんと整えられている髪を乱れさせ、青白い顔で帰ってきた彼女はブラウスにも点々と赤い染みを飛び散らせている。
よくよく見れば強張った爪の先にもなにやら赤いものが挟まっているようだ。
「き、君、まさか………」
沈黙に耐えかねてついにロンが口を開いたが、その声は裏返って妙に甲高かった。
「ついにスネイプを殺しちゃったのかい?!」
「ええ、そうなの…あまりにも憎らしいから、後ろを向いている隙にナイフでブスリと……」
続いてノーラは身振り手振りを加えながら刺されたスネイプから血がどんなに出たかなどを事細かに説明してやるつもりでいたのだが、三人の顔が自分以上に真っ青になっているのを見てやめることにした。
「――やあね。私をいったいどんな人間だと思ってるのよ。冗談通じないんだから」
「そりゃ信じるに決まってるだろう!今の自分の格好を見てみなよ」
そんなもの確認しなくとも、彼女だってよく分かっている。ネズミの血を浴びてそこらかしこ血生臭いローブを脱ぎ、彼らの目の前にあるイスにドスンと腰かけたノーラは重いため息を吐いた。
「最初は気持ち悪くてしょうがなかったんだけど、なんでも慣れてくるものね。ざっと300体のマウス・スネイプの内臓を取り出してきたわ」
「うえっ。女の子にもそんなことやらせるのか、あいつ。ハリーへのあたり方もかなりだけど君にも相当酷いな」
「その通り、異常よ!」
ロンの言葉を引き継ぐように間に会話に割り込んだハーマイオニーが、やっぱりそうに違いないんだわ、とよく分からないことを口走る。
慌ててハリーが肘で脇腹を小突いたけれど遅かった。なにが?と首を傾げたノーラに彼は言葉を選ぶかのごとく、慎重に口を開く。
「僕たちはスネイプが本気で君を退学にしようとしているんじゃないかと思ってるんだ」
「えっ、でも…」
「勿論僕たちは分かってるよ、君がテストでズルしたりしないってことぐらい。でもスネイプは信じて疑ってないみたいだし」
「それにスリザリンの生徒にあなたの様子をそれとなく探るようにも言っているらしいの」
ハーマイオニーのキリリとした眉がハの字になって心配そうに彼女を見つめた。そう言われてみれば最近、どこに行ってもスネイプに会うような気がしないでもない。
クィディッチの練習場や廊下、グリフィンドール塔でも。なるべく彼が見えたら素早く道を変える様にはしていたし、その中でも接触をしたのはほんの数回だから気にも留めていなかった。
「日曜日にはダンブルドアが帰ってくるんだ。きっとあることないこと進言しに行くはずだぜ」
「で、でも、例え真実役を飲まされたって何も白状できないわよ?だってやってないんだから!」
ハリーが大丈夫だよ、というようにノーラの肩を叩いた。きっとダンブルドアなら何とかしてくれるという自信があるのだろう。
「そんなことより僕たちはまだ、君がいったい何を調べているのかを聞いてないよ」
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