All NIght Long

□chapter8
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なんとも奇妙な光景だった。

いつもの如く目の前に現れた大蛇がユラリと鎌首を持ち上げ、口からは真っ赤な舌と共に煙を吐き出している。

ノーラが咳き込み逃げ惑っているうちに、それはあっという間に部屋中に広がり出口を見えなくしてしまった。

なんとか窓を開けることに成功し大蛇に立ち向かうべく杖を構えた彼女だったが、徐々に薄れてゆく紫煙の中にぼんやりと立っていたのはなんとスネイプだったのだ。

恐怖に硬直する彼女に向かって杖を突きつけた彼は、例のごとく死人のような土気色の顔でほとんど唇すら動かさず―――




「―――起きて!」


磁石のように強力に引っ付きあおうとする瞼をどうにか持ち上げたノーラは自分の布団の上に圧し掛かっている人間の顔を見るなり、なにやら汚い悪態をついたが、乾いた喉からはかすかに息がもれただけだった。

なぜかえらく上機嫌のエリザベスに直ちに自分の上から退くように命じて、ゴロリと寝返りを打つ。


「なによ、まだ7時じゃないの……私昨日は夜遅くまで起きて図書室に………」


そして急にハッとしたように体を起こした。


「――あれ?どうして私、ベッドで寝てるの?!」


いったいどうやって、いつから、とブツブツ呟く彼女を何言ってるのとでもいうような顔でエリザベスが見つめる。


「あなた昨日の夜はお休みって言ってからずっとベッドで寝てたじゃないの。寝ぼけてるの?」


いやそんなまさか、と言い返したかったが実際彼女は眠っていたのだ。ついさっきまで“ただの夢”まで見ていたのだから。

しかし仮に寝ていたとして、いったいどこからどこまでが夢だったのか―――?

もっともエリザベスはこの問題についてノーラにじっくり考える時間を与えるつもりはないようだった。


「ユーベール・ボルドが寝込んでるらしいのよ!」

「……こんな時間だもの、そりゃあまだ寝てるでしょうね」

「違うのよ!なんでも昨日の魔法薬学の時間に倒れたんだって。朝食が終わったらお見舞いに行くつもりなの」


頬をバラ色に染め、布団の端を握りしめてクネクネと手の中で弄ぶルームメイトの金髪に向かって彼女はふーん、とあくびを噛み殺しながら気のない返事をする。


「いいんじゃない?」

「“いいんじゃない”じゃないじゃない!あなたも一緒に来てよ!」

「ええー?」


こちらにだってやりたいこともやらなきゃいけないことも山ほどあるのに、とノーラはごねたけれども、結局はエリザベスの両手をすり合わせる神様頼みに負けてついてゆく羽目となった。

それにユーベールは彼女にとっても友人なのだから、心配しないわけでもなかったのだ。


「佳人薄命って奴かしら」

「やめてよ、不吉なこと言わないでったら!」




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