All NIght Long

□chapter5
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足のせいか思ったより時間がかかってしまった。

帰りもきっと時間がかかるだろうし、こうなれば薬草学はサボろうか、と考え始めていたのでハリー達に宿題を渡して正解だったようだ。

辺りが静かなこともあって妙にコソコソしながら地下牢教室の扉に手をかけたノーラは一応小さな声で失礼します、と声を掛けたが幸いなことに返事はない。

勝手に入るのは少々気が引けるものの、スネイプに会えば絶対面倒がおこるということはこの数日間でもう嫌というほど思い知らされている。

もっとも、いつ現れるとも限らないので、彼女は速やかに仕事を終わらせてしまおうと昨日自分の座っていた席まで小走りで駆け寄った。


「―――あった!」


なんといっても溜めたお小遣いで奮発して買ったインクだ。キラキラ光る洒落たインク壺の中に透ける深緑の液体を確認したノーラはホッと安堵の溜息をついた。


さて戻ろう、と彼女が踵を返しかけた時のことだ。

なにやら見たことのある猫がサッとノーラの足もとを駆け抜けて、準備室へと続く扉の隙間へと駆けこんでいった。

目の端に残った残像はミセス・ノリスでも、もちろんハーマイオニーのクルックシャンクスでもない。

なぜか背中のどこかがサーッと冷えるのを感じながら、彼女が周りを窺いつつ準備室を覗き込むと―――。


「ロ、ロレンツィオ!」


嫌な予感は的中してしまった。

ビン詰めされた奇妙な物体が棚上にずらりと並ぶ中、中央にデンと据えられた段ボールの中で彼は丸くなっている。

我が飼い猫ながらなんて厚かましい奴だと、憤慨しながらノーラが抱きかかえた瞬間の驚きはその比ではなかった。


「嘘でしょう……」


彼のお腹の下にで身を寄せ合っているソックリな模様の7匹もの子猫。

つまりロレンツィオはロレンツィーナだったのである。

それだけでも彼女にとってかなりのショックだったが、この場所とここの管理人のことを思い出した瞬間には、胃がひっくり返るような気分になった。

ノーラ・レッドフォードの飼い猫がセブルス・スネイプの地下牢教室で子猫を生んだとバレれば、まず自分もロレンツィオ――もといロレンツィーナもただでは済むまい。

ここに人間が入るのは稀なんだろうか、と思いながらノーラはこれを発見したのが自分でよかったと心底思った。

マルフォイやスネイプが先に見つけていたら……と考えるだけで、ああ身震いがする。

ついに決心を固めた彼女は段ボールごと9匹のネコを抱え上げた。まさかこの憐れな子猫たちを陰険蝙蝠の実験動物にさせるわけにもいかない。

それに他人、いや他猫と言いはるには彼らはあまりにも母親に似すぎている。

混乱のため子猫たちを包む毛布や段ボールの周りにまき散らされた魚の骨の様なものの出所もじっくりと考えられないまま、ノーラは予定外に増えた荷物を抱えて元来た道をヨロヨロと戻って行ったのだった。



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