All NIght Long

□chapter4
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長い雨は一向に止む気配を見せず、ノーラ達がベッドに潜り込む時間になっても大きな雨粒が屋根や窓にぶつかる音が絶え間なく響いていた。

悪夢ことも足のアザのことも、もちろんスネイプのこともなるべく深く考えないようにして、彼女は枕元で丸くなっているロレンツィオをゆっくりと撫でる。

一か月も姿を隠していたというのに彼の毛皮は相変わらずツヤツヤしていた。

てっきり鈍くさいこの猫のことだからどうせロクなご飯も見つけられなくて、ガリガリになって帰ってくるに違いない、とやきもきしていたのに。

もしかしたらどこかで誰かのお世話になっていたのかもしれない。そういえばダンブルドアも“彼が君のネコだと”なんて言っていたような気もする。

今度お会い出来たら誰なのか聞いてみようかな、とノーラは今にもくっつきそうなまぶたをしょぼしょぼさせながら思った。

お礼をするとしたら何がいいだろう。

もっとも、それを思いつくより彼女の意識が途絶える方が早かった。なにしろ今日はとても疲れる一日だったのだ。


 §


それからしばらくして彼女の目は今夜もパッチリと冴えわたった。そっと耳を澄ますとまた例の空気の洩れるような音が聞こえる。

動かそうともがいた身体も同じく、ピクリとも動かない。ー昨日とまるっきり同じ状況だった。

やはり何か得体のしれないモノがいる、という恐怖はノーラの鼓動を速める要因にはなったが、一昨日と違い、これが夢であるいうことを今の彼女は心得ている。

目が覚めていると思い込んでいる夢。身体が動かないと思い込んでいる夢。何かがいると思い込んでいる夢。

そんな夢を時間もおかずに立て続けに見るだなんてダンブルドアの言う通り、自分はよほど疲れているのかもしれない。

ギシリ、と軋むベッドの音にノーラは強張った身体を増々固くした。何やら冷たいものが足の指に触れる。

今何時なのだろうか、と耳元にまで響き始めている心臓の鼓動を聞きながら彼女は思う。

夢なら早く目が覚めてくれればいいのに。もしくはいつものようにケイトが揺り起こしてくれないだろうか。

しかしそんなノーラの願いもむなしく“ナニカ”の立てるもの音はますます大きくなってゆく。嫌な汗が背中を流れた。

なんとも言えず生臭い匂いがかすかに漂ってくる。どこかで嗅いだことある匂いである、と彼女は感じていたが思い出せない。

いったい何がそこにいるのか。

確認したくとも体はどうしてたって持ちあがらない。

ついに足の上まで這い上がってきた氷のごとく冷たい金属のようなものに押し潰される感触を覚えた時、枕元で猫の低く威嚇するような唸り声が聞こえて、暗闇の奥底から引き戻されるように彼女の意識はまた途絶えた――。




起きるには、まだ早すぎる時間だった。

早くも東の空は桃色に染まり始めていたが、ロレンツィオはもちろんエリザベスもケイトも未だ健やかな寝息を立てて眠り込んでいる。

寝汗で張り付いたシーツを引きはがしながらノーラはベッドの上で立膝を立てて窓の外を覗き込んだ。

久しぶりの太陽の光を受けてクィディッチのコートの芝生が雨粒でキラキラと光っている。

グリフィンドールの真紅のユニホームがその上空でビュンビュン飛び回っているが見えたので、少しの間考え込んだ彼女はいそいそと制服に着替えた。




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