All NIght Long

□chapter3
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どんな意地悪な質問をされたって答えられるようにしてあげる、と意気込んだハーマイオニーのスパルタ式のおかげで、いくつかの複雑な薬品と材料名を覚えた代わりに多大な睡眠時間を削ったノーラは翌日の授業のほとんどを、レースのカーテンの向こう側を眺めるようににぼんやりと過ごすことになった。

退屈な魔法史はもちろんのこと、大好きな呪文学も変身術も、何を聞いて何をやったのかさっぱり覚えていない。

それでもすべての教科を終えてしまう頃には彼女の頭もようやくまともに働き出したらしく、どこかへ追いやられてしまっていたはずのスネイプと特別授業に対する恐怖と憂鬱が急に頭をもたげてきた。


「ああ……行きたくない」

「そんなこと言ったって、どうしようもないじゃない。今日を限りだと思って頑張らなくちゃあ。それでその補習授業は何時からなの?」


なんだかんだで気の毒には感じているのだろう、いつもつっけんどんな物言いをするケイトの語調もどこか気遣うように優しげだった。

両手で顔を覆い隠し苦悩のポーズをとったノーラが指の間から4時40分、と呻く。


「あ、あんた今4時40分って言った?!」

「…うん?」

「“うん”じゃないわよ。あと、3分しかないじゃない!」


「え、ええ?!あ、あああっ、いやだ!どうしようっ!」


走りなさいと友人に背中を叩かれるまでもなく、彼女は地下牢教室に向けて猛然と階段を降りはじめた。

息を切らして廊下を駆けながら頭の中でそういえば、と思い出す。スリザリンには今日最後の授業がなかったはずだ。

だから授業終了の5分後なんていう無茶苦茶な時間に設定してあるのだろう。ノーラがグリフィンドールであるということをスネイプは知っていたはずなのに。

いや、彼の場合彼女がグリフィンドールだということを知っていたからなのかもしれなかった。



案の定、補習授業に2分の遅れを取らせた彼女は扉の脇で待ち構えていたスネイプから5点の減点をくらった。

これは本式の授業ではないのにとか、5分ではどんなに走ったって間に合わないとか、

のど元まで引っかかる言葉をこらえて、ノーラは黒いカーテンのような髪の向こうの闇色の瞳を見つめたが、彼は何一つとりあうつもりはないようだ。


「何か文句があるのかね?廊下を走った分も含めて10点にしてやってもよいのだぞ」


逆に凄まれてトボトボと席に着きかけた彼女の背に追い打ちをかける様に暗く低い声が投げかけられる。


「どこへ行くつもりだ。生憎お前の席はここと決まっている。これなら姑息な手も使えまい」


一つ列の離れた左側端に座っているマルフォイが喉の奥で引きつれるような嫌な笑い声をあげた。

ひょっこり出てくればなんでも許してしまう、などと考えていた昨日の自分の言葉を打ち消しながら彼女はど真ん中の最前列に腰をおろした。




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