All NIght Long
□chapter2
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「……あ、あの、私…レッドフォードです。グリフィンドールの………」
「そんなことは勿論承知だ。君こそここへ呼ばれた理由は分かっているのかね、Ms.レッドフォード?」
「いいえ」と小さな声で答えながら俯いたノーラの中で、手違いで呼ばれたのではないかという夢がついえた。
目ざとく見つけられれば減点は免れないだろうに、少しばかり緩んでしまっているネクタイすら直してない自分のことがとてつもない愚か者に思われる。
寒いくらいここは冷えているのに、スネイプが次の言葉を紡ぐまでの沈黙のことを考えると両脇に沿えた手の平がじっとり汗ばんでくる気がした。
「よかろう。では質問を変えるが、最近の抜き打ちテストの結果を貴様はどう考えている?」
いきなりの貴様呼ばわりに加え語調が怒気をはらんでいたようなので、彼女はもっとマシな言葉を思いつけないのだろうかと思いながらも分かりませんと答えた。
テーブルの上で組まれた彼の長い指がピクリと持ち上がる。
「満点だった」
まさか、と漏らしかけたノーラの言葉を遮るようにスネイプは少し声を張った。
「その前も、その前もだ」
たじろぐ彼女が言うまでもなく、スネイプ自身この平凡なグリフィンドール生が日頃の実験でどのような成績を残し、どの程度の頭を持っているのかくらいの事は良く心得ている。
たまたま山が当たっただけなのか、人知れぬ血の滲むような努力の結果なのか、それとも―――
一秒ともたずに息の詰まるように鋭い彼との視線の交わりを断ったノーラが小さく息をついた。
「なにかね」
「い、え……なんでもないです」
「お前のようなのろまな人間に参加する資格があると思うと吾輩はすでに嫌気が差すのだが、ノーラ・レッドフォード……明日の放課後、成績優秀者のみで特別授業を行う。その頭に詰まったおがくずを少しでも減らしたいのなら来い――もっとも後ろめたいことが無ければの話だが、」
組んでいた指をほどき、天板を叩くとこれ以上小さくなれないというほど身を縮ませた体がビクリと震える。
「話は以上だ」
最近めっきり効果を感じなくなってきていた自分の脅しが面白いように効いたことで、少しばかり気をよくしたスネイプがその高い鉤鼻を鳴らしてフン、と見下すように彼女を見つめた。
聞きたいことも、できれば言ってやりたいこともノーラの頭の中にはパンクするほどたくさんあったのだが、喉につかえてしまったように一つたりとも言葉にならない。
「いつまでここにいるつもりだ。吾輩が君に茶でも振る舞うとでも?」
どうにかこうにか失礼しますと声を絞り出して扉を後ろ手に閉めた時のノーラは、惨めな虚脱感と虚無感でクタクタだった。
どうやらセブルス・スネイプが生徒全てを憎んでいるという話は本当だったようだ。
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