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□神様になんて祈るだけムダ
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エースはともかく今は梵天丸だ。戦国時代の治療法なんか今に比べたら微々たるものだ。風邪で死ぬとかどんなギャグだまじで。
右目の治療はあたしが異世界から医者を連れてくれば良い。でも右目の治療を全て任せる訳にはいかない。梵天丸の将来のためには小十郎が必要なのだ。そしてそのためにはがきんちょ4人を連れて世界を渡る必要がある。

『まずは医者か…病気ならシャマルだが、外傷なら暁緒ーアキオーだな。』

八咫鴉である暁緒。魔物でありすべての天狗の長であるが今は毘沙門と改名し魔物専門の医者をしているあたしの古くからの知人だ。魔物は長命でありあたし自身不老不死であるため昔は良く遊び相手をしたものだ。今では良い飲み友だちである。
長い付き合いであるからこそ人柄も医者としても信頼しているため、今回の治療は彼に任せようと思う。
心臓の真上に彫られた月下美人の刺青に触れながらあたしは彼の名を呼んだ。

『暁緒、仕事だ。』

次の瞬間何もなかった空間に長身の眼鏡をかけた男が現れた。

「お久しぶりです、沙羅。」

にこやかに挨拶をしながらやわらかい笑顔を浮かべ暁緒はあたしを抱きしめた。

『久しぶりだな。再会してすぐで悪いが仕事を頼みたい。』

抱きしめかえしながら言うと笑顔を崩さずに言った。

「沙羅の頼みを私が断るはずないでしょう?ただ仕事が終わったら月見酒に付き合って下さい。」

報酬はそれで十分ですよ、と軽く言う。こんなやりとりもいつものことだ。

『なら早速頼むよ。梵天丸。』

4人で壁際に固まってこっちを見ていたいたがきんちょに目をやり梵天丸を呼ぶと、ビクッと反応した。

『こいつは暁緒。あたしの信頼する医者のひとりだ。匙って言ったほうが伝わるか?』

暁緒はあたしから離れ梵天丸に近づき目線を合わせるようにかがんだ。

「はじめまして、毘沙門と申します。暁緒は幼名ですので毘沙門と呼んでくださいね。」

「伊達輝宗が嫡男、梵天丸だ。」

互いに自己紹介をし終えたところであたしは今回の仕事内容を伝える。

『今から梵天丸の世界に行く。暁緒も史実は知ってるだろ?それに一枚噛むから治療の方をよろしく頼む。』

「あぁ…右目の治療ですね。分かりました。」

『梵天丸だけ連れてがきんちょを置いていくことは出来ないから全員で世界を渡る。あたしの言うことは絶対だ。文句を言うならアイアンクローかましたまんま正座で説教するから忘れんなよ』


さて、行こうか。梵天丸の気付かなかった現実と愛をみつけに。独眼竜としての名を世に轟かせる未来への一歩を踏み出しに。
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