人間審査


□第1審
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ここは、都内某所の私立高校『木戸川第一高等学校』。
この学校にいわゆる入学試験は無い。というのも、この学校は研究機関という側面も持ち合わせており、レベル1から10までの生徒が総勢300名在席している。
本日は3ヶ月に一度の定期的な『人間審査』が行われている。


「次の方、えぇと、穂村…マミさん。お入り下さい」
と、人間審査の審査技士(エンジニア)が誰かのことを呼んだ。
恐らく、僕のことを呼んだのだろう。
「あの………それ、『マコト』って読むんですけど──『穂村真実』って書いて、『ホムラマコト』です」
「あっ、男性の方でしたか、それは大変失礼いたしました」
「いえ、よく間違えられるので、気にしてませんよ」
「──では、中へお入り下さい」
エンジニアの差した部屋の中には、何やらゴテゴテとした大きな機械がドッシリと構えていた。
この機械こそが『人間審査装置(ヒューマニスト)』である。
今まさに僕の人間審査が行われようとしているのである。

「こんにちは。緊張してるのかい?」
部屋に入ると、奥からまた別のエンジニアが現れて、僕に声をかけた。
「は、はぁ。まあ、何回やっても慣れませんね」
正直、こういうやり取りが一番面倒臭い。さっさと始めて、ささっと終わりたいものだ。まあ、向こうにも事情というものがあるのだろうが──
「私は審査技士の『渡利(わたり)』といいます。よろしく。それでは、人間審査を開始します。肩の力、抜きましょうか」
「は、はあ」
「では、目を閉じて」
僕は深く息を吐き、目を閉じた。
「審査には3分ほどかかります。あらかじめ、ご了承下さい」
「はい」
遂に、僕の人間審査が始まろうとしている。
「それでは始めます」
機械音を発しながら、ヒューマニストという悪魔の様な装置に電流が流れた。
この審査結果は僕の人生を──生き方を変えることになるのだが、そんなことは誰も知る由もなかった。
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