人間審査


□第1審
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「お疲れ様です、渡利さん。今の生徒ですべての審査が終了しました」
「そうか………」
と。
大きな機械の目の前でそんなやりとりをしているのは、人間審査の審査技士のふたりである。
「結局、彼だけだったのですか?」
「彼?なんのことだ?」
「お忘れですか──『レベル0』がまたこの学校から誕生したというのに…………」
「あぁ……そういえば、そうだったな。忙しすぎて忘れてしまっていた…………わけではないが──忘れたままの方が良かったのかもな」
「人間審査取締役会に連絡した方が良いのでは?」
「役会(うえ)の連中はどうせヒューマニストの故障だとしか思わないだろうよ──今までも実際、そうだったからな。俺も最初はそう思って、故障箇所を探してみたが、見つからなかった。プログラムのバグかとも考えたが、バグは検出されなかった。つまり、レベル0とは、何かしらその人間の性質を表していることになる。それを役会に説明してはみたが、相手にされなかった。俺はもう無駄な仕事はしたくない。念のため、再審査を行う予定だよ」
「レベル0とは、いったい何なのでしょうか?」
「俺が思うに、レベル0っていうのは──人間が1〜10の数字で表されるわけだから──人間という枠を外れてしまった存在、ということになるのではないだろうか」
「つまり………人間ではない、と?」
「あくまで、俺の仮説なのだが──そういうことになる」
と言って、渡利は机の上の一枚の紙切れを手に取り、眺めながら、また言った。
「──穂村…真実……か…………」

──コンコン。
部屋の扉に何かがぶつかる音がした。恐らく、誰かが扉をノックしたのだろう。
すると、扉が──ガチャ──という音とともに開いた。
「失礼します」
そう言って、扉の向こう側から現れたのは、穂村真実だった。
「すみません、僕の審査結果はどうなっているのですか?」
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