人間審査


□第1審
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『子供には無限の可能性が秘められている』
などと言われていたのは、二昔ほど前のことである。
科学の発展は急速に進み、瞬く間に開発競争は激化した。
そんな中、時代の流れに逆らい、全く新しく、画期的な恐ろしい装置が誕生した。
『人間審査装置(ヒューマニスト)』
その名の通り、人間そのものを審査し、その人間におけるすべての事柄から判断され、それらをランク付けするというものだ。
計算能力や記憶力は勿論。基礎体力、瞬発力、持久力、容姿、性格、生活環境までもが数値化され、その人間そのものの総合値──『人間値(レベル)』を示す。
レベルは1から10までの数値で区分され、数字が大きいほど高い能力を有していることを表している。レベル1なら『落ちこぼれ』。レベル10なら『エリート』ということになる。
世界中の政府がこの装置を絶賛し、国民の統括に利用することを採決した。
そして、この装置が本格導入された年を新西暦1年と定め、キリストが神だった時代は静かに幕を下ろした。
人間は新たな『神』を生み出してしまった。人間には決してできない、『人間』という生物の絶対的な階級を審査してしまう装置。もしかすると、神にもできなかったことかもしれない。
嫌な時代になったものだ。人間すらも、データで管理できる時代になってしまったのだ。
学校への入学試験、企業への就職試験、国家資格の取得。
これらの他にも様々なことに利用され、『レベル』がこの時代のすべてを掌握していた。
この装置の完成はこの世界の流れを変え、制度を変え、人間という生物の生き様をガラリと変えることになった。
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