戦国KISEKI


□第伍話
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寝苦しさにハッと目を覚ます。



「……夢…」


額の汗を拭って真麻は小さく呟いた。



しかし、目に入った石製の天井と硬く冷たい床が、容赦なく現実を突き付ける。




(…じゃ、なかった……)



地下牢での生活が始まって、早三日が過ぎていた。



と言っても、格子の外に出られない真麻には景色で時間帯を把握する事も適わず、1日の始まりと終わりはひどく曖昧である。



あまりの退屈さに溜息を吐くと同時に、この冷たい空間に足音が響いた。




「…真麻、」


「実渕様…」



食事を運んできた実渕は、今日も悲しそうに微笑んで格子の鍵を開ける。



「…また、一つも手を付けなかったのね。」


囚人の食事にしては少々豪勢なそれを下げ、持ってきた膳と取り替えながら実渕は真麻の顔を覗き込んだ。


「…食欲がないのです…今お運びいただいたものも、きっと…」


真麻は膝を抱えて視線を逸らす。


「お願い真麻…一口でもいいの。じゃないとあなた…」


少し痩せた肩を掴んで実渕は懇願するように言うが、真麻は首を振った。



「…構わないのです。むしろ、出来る事ならこのまま消えてしまいたい……」




「ならば、今すぐ殺してやる。」



突如、聞き慣れたあの声が空気を震わせる。




「…征ちゃん……」



「…私を殺し、次は誰を餌にするのですか?“将軍様”。」



真麻が鋭い目付きでそう言うと、赤司は満足そうに口角を上げた。



「…そんな口が叩けるならまだ当分健康上の心配はないな…だが、自害させてもらえると思うなよ。次見た時に食事をしていなければその場で斬り捨てる。」



それだけ言い残して、赤司は戻っていく。




「…心配してるのよ…征ちゃんだって本当は真麻が、」



実渕はそう言いかけるが、真麻の肩が震えているのに気付いて言葉を切った。



「…分かっています…でも、嘘を吐く方は……嫌いです……」



嫌い、と言いながら顔を埋めるその袖には、幾つもの涙の染みが出来ていた。





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