戦国KISEKI
□第参話
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部屋に呼ばれていた真麻は赤司が下に降りている間、赤司の読み終えた本を読んで時間を潰していた。
「征ちゃんったら、こんな堅苦しい本に毎晩夢中なのよ?ほんと変な趣味してるわ。」
実渕は数ページ捲ってやはり興味が湧かないのかすぐ元の場所に戻してしまうと、真麻は少し顔を上げ、微笑んで言う。
「征十郎様の好きな物と思えば、私はきっと白紙の本でも楽しく読めます。」
「もう、またそんな事言うんだから。」
最早呆れ果てて実渕も笑ってしまった。
そのまましばらく和やかな空気が流れていたが、戻ってきた赤司の仏頂面に2人はぎょっとする。
「随分難しいお顔をされているのですね…」
どう扱っていいのか分からず複雑そうな顔をする真麻に赤司はずんずんと歩み寄りその手を取った。
「真麻、」
「はい。」
「身長の高い男は好きか。」
「私は征十郎様が好きです。」
「!そ、そうか…」
たった二言のやり取りで表情を緩めた赤司を第三者の実渕だけは冷めた目で見ていた。
(何なのこの茶番劇…ってかまた背の高い子来たワケ?)
その視線に気付いたのか、赤司は実渕をキッと睨み返す。
「何故なんだ。お前も、永吉も、小太郎も…それから敦に黄瀬、青峰……真太郎だって、最後に会った時には六尺四寸はあると言っていた。」
※六尺四寸…約195p
理不尽な八つ当りに怒りたいところだったが懐かしい名前に実渕は思わず反応した。
「そう言えば真太郎君ともうしばらく会ってないわね。元気にしてるかしら…」
「…お前が気に掛けているのは高尾とかいう忍者の方だろう。」
赤司が呆れ顔でそう言うと、実渕は「だってあの子可愛いんだもーん」と頬を押さえてうっとりする。
「女性で忍をしている方がいるのですか?」
真麻は憧憬を孕んだ眼差しで聞くが、実渕は首を振った。
「違うわよ、高尾君は男。」
(え、でも…実渕様が可愛いって…実渕様は男性で……あれ…!?)
「玲央、真麻を混乱させるな。」
腕を組んだり頭を抱えたりして考える真麻を一瞥して赤司はジトッと実渕を睨んだ。
「あはは、ごめんなさい……あっ、でも確か本当に女の子も1人いたわよ。」
「あぁ。緑間家のくノ一は昔から優秀な事で有名だから今は彼女がその筆頭なんだろう。僕の嶋原訪問の件で朝廷からの苦情の対応に追われている頃だろうが、高尾や彼女がいるなら心配ない。」
「真太郎君は家臣に恵まれてるわねぇ…」
実渕は溜息を吐くように言う。
「なに、僕だって十分恵まれていると思っているさ。」
赤司は何気なく言ったつもりだったのだが、その言葉は実渕の心を大きく揺さ振った。
「…っ…あぁもう大好き征ちゃんんん!!」
「なっ、」
自分より一回り以上大きな男に勢い良く抱き付かれ、赤司は後ろに倒れそうになる。
「おい、玲央……「「赤司ぃぃぃぃ!!」」
そして何故か聞いていたらしい葉山と根武谷も天井から落ちてきたり、掛軸の裏から突撃してきて赤司は完全に飲み込まれた。
(…征十郎様…見えなくなっちゃった……)
よってたかって赤司に抱き付く彼らを見つめ真麻は苦笑する。
「…仕事に戻れ、そんなに暇が欲しいならばいつでもくれてやるぞ。」
ぼろぼろになった赤司が殺気の籠もった目でそう言い彼らを震え上がらせるのはそれからすぐの事であった。
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