戦国KISEKI
□第漆話
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―10年前―
『…投了なのだよ。』
江戸城の一室で、まだ顔つきの幼い緑間が仏頂面で呟いた。
すると、赤司は表情一つ変えず息をつく。
『…またか。いつになったら僕にその台詞を言わせてくれるんだ?』
『うるさい!次こそは必ず負かせてやるのだよ!!』
ビシッ、と将棋盤を指を差してそう言うと緑間はすたすたと部屋を後にした。
『…全く、どいつもこいつも……敦、次はお前が相手をしろ。』
赤司の振り返った先にいた紫原は、露骨に表情を歪めてそっぽを向く。
『えー、やだ。将棋分かんないし。』
『簡単だからすぐ覚えるさ。』
『興味ないし。』
ここまできっぱりと断られると、赤司もそれ以上は強要しなかった。
『じゃあ、何か面白い話をしろ。お前は僕の遊び相手として連れてこられたのだろう?』
紫原の顔に、僅かではあるが影が差す。
(バカだなぁ……オレはキミを殺しに来たんだよ。)
そう、赤司の友人役として遣いに出された紫原は当時すでに倒幕体制にあった土佐藩の刺客であり、その標的はまさに、今目の前にいる次期将軍であった。
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