戦国KISEKI
□第肆話
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季節は流れ、江戸に春が訪れた。
「真麻!」
珍しく早足でやってきた赤司は真麻の部屋の襖を勢い良く開ける。
「!征十郎様…そんなに慌ててどうされたのですか?」
「玲央が外出の許可を出してくれた。明日、二人で出掛けよう。」
思いもしなかった申し出に、真麻はしばらくきょとんとしていたが、やがてパッと表情を輝かせた。
「…本当ですか!?」
赤司も嬉しそうに頷く。
「あぁ、僕もまだ夢のようだ。一緒に城外に出られる日が来るとは…」
あまり人の多い所には行くなと言われているんだがな、と続けて赤司は苦笑するが真麻はふるふると首を振った。
「それでも嬉しいです、征十郎様と一緒なら行き先などどこでも構いません。」
「そうか。ならば明日は行き先を僕に任せてくれないか?」
「はい、もちろんです。どこへ行くおつもりなのですか?」
赤司は答えようと口を開いたが、少し考えてニッと笑みを浮かべる。
「…お前にはまだ黙っておく。」
「そんな、気になります!」
教えて欲しいと頼まれても赤司は聞き入れず話題を逸らすように手に持っていた風呂敷の包みを真麻に押し付けた。
「明日はこれを着てこい。予め頼んでいた物が今日出来上がって今、取りに行ってきた所なんだ。」
そう言う事から察するにそれは着物のようで真麻はありがとうございます、と礼を言って受け取るが、さっき問い掛けた事を忘れる程記憶力の悪い女ではない。
「…はぐらかされるのですね。」
少し拗ねるようにして赤司を見上げると彼は再び笑って真麻の前髪を撫でた。
「いいじゃないか。楽しみにしていろ。」
そして何食わぬ顔で部屋を出ていく。
その背中を見つめて真麻は溜息を吐いたが、それよりも出掛ける楽しみでまたすぐ笑顔に戻るのだった。
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