蒼き薔薇が散る時

□その執事 邂逅
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とある路地裏

シ「寒い…」
「大丈夫?」

今シエル達がいるところは貧民街で空気が冷え切っている。

セ「いくら貧民街でいつものお召し物が目立つとは言えやはりその服ではお寒いのでしょう。
一雨きそうですし」
「そうだね…
あのさ、ここに張っていれば本当に来るの?」
和「あぁ、入り口はあそこしかない上唯一の通り道はここだけだからな」

シエルと時雨は入り口を覗き込んだ。

シ「次に狙われるのはあの長屋に住むメアリー・ケリーで間違いないな?」
「うん…セバスチャンと和成の調べた結果でも一致したし」
シ「たしかに…殺された娼婦達には
「臓器がない」以外にも「共通点」があった。
だが、奴が殺す必要性がどこにある?」

シエルは考え込んだ。

シ「それに僕は…

…って聞いてるのかセバスチャン!」
セ「あ、すみません」
和「っていつの間に猫をだっこしてんだよ!!」
「可愛い…」

セバスチャンはいつの間にか野良猫をだっこしていた。
シエルが注意したことによりすぐ話したが。
その後もシエルは考え込んだ。
その横顔を見て時雨は和成から受け取った調査書を読んだ。

「(まさか…こんな共通点があったんだ…)」
和「時雨?どうした?」
「え?あ…いや」
和「寒いか?」
「うぅん、大丈夫。ありがとう」

時雨は和成に笑いかけるとまた調査書に目を通した。

その時、


ギャアアアアアッ

4「!!」

突然悲鳴が聞こえた。

シ「なっ!?誰も部屋にはっ…」
セ「行きましょう!」

4人は待ち伏せしていた長屋の入り口に向かって走った。
そしてシエルが思いっきり扉を開けると、

ピピッ

シエルと時雨の顔に血が飛びついた。

ババッ

セ「いけません!」
和「見んな!」

セバスチャンと和成は咄嗟に2人の視界を覆った。
目の前にはバラバラになったメアリ・ケリーが死んでいた。
するとシエルと時雨は体を震わして、

シ「うッ、ぐえっ」
「うっぐっ」

その場に嘔吐した。
しばらくすると雨が降り出した。
セバスチャンはいまだシエルの目を覆いながら、和成は時雨の背中を摩りながら長屋の中を睨んだ。

セ「随分と派手に散らかしましたね。
“切り裂きジャック”――――いや
グレル・サトクリフ」

その場に立っていたのはグレルだった。

グ「ち…違いますコレは…
叫び声に駆け付けた時にはもうっ…」
和「もう…なんだよ?俺達は唯一の通り道にずっといたんだぜ?
お前は一体何処からその袋小路の部屋へ入れたんだ?」
セ「そのお姿でしらばっくれるおつもりですか?」

グレルの服からは血が滴り落ちている。

セ「もういいでしょうグレルさん。
…いや「グレル・サトクリフ」さえ仮の姿でしょうが」

セバスチャンは笑みを浮かべていた。

和「くだらねぇ芝居はやめようぜ、「グレル」さん」
セ「“貴方の様な方”に人間界でお会いするのは初めてです」

雨の勢いがどんどん強くなっていく。

セ「お上手にそれらしく振舞われていたじゃありませんか」

セバスチャンが褒めるとグレルは表情を変えた。

グ「ンフっvV
そ―――お?」

するとグレルは髪を縛っていたリボンを解いた。

グ「そうよ、アタシ女優なの。
それもとびきり一流よ」

どんどんグレルの姿は変わった行く。

グ「だけどアナタだって「セバスチャン」じゃないでしょう?」
セ「坊ちゃんに頂いた名前ですから、
「セバスチャン」ですよ…今は」
グ「あら忠犬キャラなのね。色男はそれもステキだけどvV
それじゃ改めましてセバスチャン…いえ、
セバスちゃんvV
バーネット邸執事、グレル・サトクリフでございマス★」

グレルの姿は一変して派手になった。

グ「執事同士どうぞヨロシクvV」

グレルが投げキッスをするとセバスチャンは固まった。

和「うわ…まだ玲央さんの方が断然ましだな」
セ「そ、そうですね…」

グレルと近い玲央の事を思い出した和成は苦笑いをした。

グ「あぁ〜やっと本当の姿で会えた!
スッピンで色男の前にいるの恥ずかしかったのヨ?ンフッ
まぁ…そっちのガキンチョがいまいちだけど」
和「別にお前に好かれても嬉しくねぇよ!!」

和成はツッコミを入れた。

和「まぁ悪魔が執事してるなんて初めて見たから最初はビックリしちゃったワ」
セ「それは…貴方も同じでしょう?
ねぇ和成」
和「だな。
俺達も結構生きてるが“お前の様な奴”が「執事」をしてるなんて聞いたことねぇわ」
セ「えぇ…
神と人の中立であるはずの存在…
死神!」

そうグレルの正体は人間ではなく悪魔でもなく死神なのだ。




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