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□俺、努力しますから
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「せせせせ先輩っっ!!」
『・・・日向君?どうしたの?』
いつものように部活が終わり、ネットやボールを片付け終わった時だった。
もう着替え終わったらしい、後輩の日向君が今までにないくらい緊張した様子で話しかけてきたのは。
日向君が視線をきょろきょろさせている後ろで、夕や龍たちが帰ろうとしている。今日は自主練する人居なさそうだし、鍵を職員室に返しに行かないと。
「・・・っ、す、すきです!!」
私の思考が停止する。その大きな声は今にも体育館を出ようとしていた部員の人達にも聞こえていたみたいだ。旭さんなんて顔を真っ赤にしている。乙女か。
『え、わ、私!!?』
「はい!おれ、花子先輩の事がすきです!!」
わざわざ爆弾発言をリピートしてくれた日向くん。月島君は山口君と鼻で笑って通りすぎ、影山君は無表情と思いきや耳が赤くなっていた。
なに周りを観察してるんだ、私の馬鹿。こういうこと言われたら何て答えればいいんだろう。悲しいが私には告白された経験なんて0だった。初めての体験に驚きしかない私は口をぱくぱくさせるだけ。
「しょっ・・・翔陽ぉぉぉ!!お前ぇぇぇぇぇ」
「どうしたノヤさん!!?」
夕が頭を抱えて悶絶している。日向くんと仲いいもんな、我が子の成長を見守る親の気分?いや違います。
『・・・えと、ごめん、ね?』
その言葉を言ったとたん、日向君がこの世の終わりでも見たような顔をした。
「・・・どっ、どうしてですかっ!?おれのこと、嫌いですか!?」
『そんなこと無いよ!?日向君のことは好きだけど・・・こう、弟みたいっていうか』
「おっ・・・おとうと」
何か忘れ物をしたらしく月島君が部室に戻る。
「恋愛対象として見られてないなんて残念だねぇ」
そんな嫌味も耳に入らないほど日向君は茫然としていた。悪いことしちゃったかな。いや、逆に悪いことしかしていない。
「あの!おれのこと、嫌いなわけじゃないんですよね!?まだ希望あるんですよね!?」
『え、あ、うん』
「だったら!!」
日向君がぎゅっと私の手を握った。
真剣に私の目を見つめてくる。
「あの、明日の休み、おれと一緒にでかけてくれませんか!」
『え』
「先輩に好きになってもらえるように、おれ、努力しますから!!」
諦めてはくれないようである。