淡逝
□Act.4
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「主のもとへ帰らなくても良いのですか?」
屋上で風にあたってると、背後から声をかけられた。
気配に気付いていたから、驚きはしなかったが。
「かまわねェよ。一心同体ってわけじゃねェンだし」
「意識を共有してるくせに?」
「俺が一方的にしてるだけだ。関係ねェよ」
素っ気なく言うと、そいつはクスクスと笑った。
仕方なく体ごと振り向いてやると、笑い声は止まり、代わりに困ったように眉を下げる。
「迷ってるんです」
「だろォな。 …誘われたのか」
「えぇ、まぁ。 彼やあのヒトたちのことを、チラつかされました」
やり方が三下だなァ。言うと、私には効果的でしたよ。と返された。
睨みつけてやると、肩を竦めて、貴方といるときは僕でしたね。などと言ってはぐらかしやがる。
「どォするンですかァ?」
白々しく聞くと、だから貴方に相談しに来たんです。と、面白味のない返答をされた。
「お前の思うよォにしろよ」
「ふふ、予想通りの答えですね」
「それを求めて来たっつーことだろ」
そいつを一瞥し、背を向けて歩き出す。
「貴方は」
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