短編夢2

□itoshikimie
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朝の、光に



君が消えてしまいそうだったから。





俺はまた、眠ったふりをした―…





【itoshikimie】





カーテンから差し込む朝日に、ゆっくりと瞼を開けた。




ベッドの、俺の横にいる君は、まだ寝息を立てている。




昨日、変な夢を見た、俺は。




なんだか分からない不安に駆られる。




馬鹿な夢だよな、君にふられるなんて……




「ん………」



ピクリ、と寝返りをうって、またスヤスヤと眠る君。





陽光は、君を包むようにさしている。




『眩し……』




光って、きらきら、クリーム色。




眩しすぎて、まるで君の体が光に溶けていくみたいだった。





待って、行かない、で……




俺の心が、叫んでる。




本当に、君は消えていってしまうようだった。



あまりにも健やかな寝顔が、さらに俺を不安にさせる。





「別れて」





どうして、どうして俺、そんな夢を見たんだ。






どうして、信じられない?




目が覚めた君は、いつものように笑ってくれるって。





ねぇ、信じられる、力が欲しいよ。



勝手に一人、君を失うことに悩んでる俺に。




最後まで……


信じられる、力を下さい。





そう願いながら目を閉じれば、瞼の裏に君が映った。





思い出、だ。





君と積み重ねて来た思い出たち。




君はこっちを向いて、笑ってるんだよ。




眩しい程の笑顔を、俺に見せるんだ。





幻でもいい、と思い出の残像にしがみついている俺は………




弱い。










眠ったふりのはずだったのに、
いつの間にか、また眠ってしまった俺。




横に手を伸ばすと…………




…ない。




君が、いない。




慌てて飛び起きると、からの布団。





嫌な汗が、背中を伝う。




ねぇ、君は。




何処?
何処に、いるの?





今すぐ、逢いに来て。



抱き締めたい。


無茶苦茶に、キスして、この腕に閉じ込めて。






もう、俺の側を離れない、ように―…






「あ、おはよう」




すると、ドアの向こうから君が顔を出した。




「休みだからって、遅いよ?


コーヒーいれてあるから」




違う、違うんだ。


俺は君より、早く起きたんだよ。


だけど俺は弱いから、現実から逃げたように目を閉じた。



勿論そんなこと言えない俺は。




笑って手招きした君に、ベッドから慌てて降りて走って駆け寄って、




「ちょっ………なにっ」





抱き締める。キツく、キツく。




「………どうしたの?」




君は俺の背中に手を伸ばして、抱き締め合う形になる。





『ねぇ……



好き、って、言って』




"目が覚めたら、好きって言ってもらおう"



眠りにつく前、思ったことを言葉にする。




「本当に……どうしたのよ?」




ちょっと笑ってるのかな。君の表情は、見えないけど。




『お願い……』





子供みたいに。君の胸に頭をすり寄せて言ったら、







「好き。


………好きだよ?」





ずっと待ち望んでた言葉をもらって。

急に、鼓動が速くなる。





『ぜってぇ別れねぇかんな………。

お前が別れたい、って言っても……別れない、から』





思ったことを、うわごとのように君に伝えれば……





「変なの。



……別れないよ、あたしだって。


別れてなんてあげないんだから」




さらに嬉しい言葉をくれた。





俺は少し体を離して、微笑む君に、触れるだけのキスをした。





「もう………


ホントにどうしたの〜?
怖い夢でもみた?」




馬鹿にするように言う君に、頷くのは………



やめておいた。






ねぇ、何も、問わなくていいから。




ただ、側にいてください。





幻だって、偽りだって、いいから…。





ずっと、抱き締めさせて。




俺は死ぬまで、君を信じる。






………愛し、君への……



たった一つの、誓い。





END





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