短編夢2
□ideal
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「ドラ○もんがいたらいいのになぁ〜…」
『…は?』
何言ってんだ、この女。
【ideal】
俺の隣りの席で、理想を語る女子。
どうやらソイツは、金曜夜7時の人気者"ド○えもん"の存在を夢見ているらしい。
『アホじゃねぇの……あんなの、マンガだろ』
「マンガでも、ホントにいたらいいと思わない!?」
…だからアホなんだ。
マンガなんだから、ホントにはいない、って俺は言いたかったのに。
こんなんだから、俺はコイツが嫌いだ。
『…空でも飛びたいワケ?』
呆れ眼で聞いてみると、
「ううん、空なんか飛べなくていい」
って言われた。
『じゃあ……一瞬でどっかに移動できるようになりたいとか?』
あのピンク色のドアを思い浮かべて言ってみたが、
「違うよ」
あっさり否定された。
なんなんだ一体。
せっかく俺がアホみたいな話に食いついてやってる、っていうのに。
元々ドラえ○んなんてよく知らない。
他にどんな道具があったか、考えていると……
「22世紀には、ド○えもんが生まれるんだよ」
ソイツは笑顔で言って来た。
『は?』
あぁ、また"はぁ?"って言ってしまった。
コイツと喋るといつもそうだ。
「だってドラ○もんは22世紀から来た猫型ロボットなんだよ?」
そう俺に教えてくれたけど、生憎俺だってそのくらい知ってる。
『22世紀に出来るんじゃ……
お前も俺も、ドラ○もんには会えねぇな』
ちょっと笑って言ってやると、
「そうなんだよね……」
肩を落としてしまった。
オイオイ、本気にしてんのかよ……
『お前は、ド○えもんの何が目的なんだよ』
本題に戻して、聞いてやる。
「な、に…って……
教えない」
オイ、ここまで来てそんなのアリか?
負けず嫌いの俺は、意地でも聞き出してやりたくなった。
『いいから教えろ、って。
どうせ大したことないんだからさ』
「……そんなことないもん…」
『じゃあ教えてみろよ』
コイツ、譲らねぇ。
おかしいな。俺の言うことなら大抵なんでも聞くヤツなのに。
だってコイツ、俺のことが……
………ん?
ドラえも○って、何でも出来るんだっけか?
本当に何でも?
…だとしたら、単純なコイツの頭の中なんか……
たかが知れてる。
『好きな人と両想いになりたい、とか?』
そう言ったら、驚いて、頬を一瞬で赤く染めた。
ビンゴ。
どうりで俺に言えないわけだな。
『そんなの、未来のロボットに頼むようなコトかよ。』
そう言うと、俯いてしまった。
『自力でアタックして、自力で……
告ったらいいじゃん』
「だって……っ!
自力なんかじゃ、どうにもならないから……」
やべぇ、コイツ…泣きそう。
「…でんわ……」
『へ?』
すると消え入りそうな声でソイツは言った。
電話、って、なんだ?
「もしもっ、私とその人が……両想いだったら、って…」
『もしも?』
「も、しも……」
"もしも"。
知ってる、ソレ。
んで………電話、だろ?
そんな道具、あったな。
"もしも○○だったら"ってやつ………
『もしも、ボックス?』
ゆっくりと頷いたソイツに、思わず口元が緩む。
『もしも、じゃダメだろ。
そんな機械に頼って人の心動かすんだ?』
追い詰めるように言ってやると、
「っ〜〜…」
悔しそうに涙目でみて来るソイツにでこピンをくらわせて。
「いっ、たっ…!」
『頑張ってみろよ。自力で。
案外いけっかもよ?告ってみれば?』
それは、俺の本心。
もしも、君から告られたら……
俺はすぐOKするんだろうな。
意を決したように口を開いた彼女に向き合って。
もしも、付き合ったとしたら……なんて、
理想を膨らませてみた。
END