短編夢2

□ideal
1ページ/1ページ




「ドラ○もんがいたらいいのになぁ〜…」




『…は?』



何言ってんだ、この女。



【ideal】





俺の隣りの席で、理想を語る女子。


どうやらソイツは、金曜夜7時の人気者"ド○えもん"の存在を夢見ているらしい。




『アホじゃねぇの……あんなの、マンガだろ』




「マンガでも、ホントにいたらいいと思わない!?」




…だからアホなんだ。
マンガなんだから、ホントにはいない、って俺は言いたかったのに。
こんなんだから、俺はコイツが嫌いだ。




『…空でも飛びたいワケ?』



呆れ眼で聞いてみると、



「ううん、空なんか飛べなくていい」




って言われた。



『じゃあ……一瞬でどっかに移動できるようになりたいとか?』



あのピンク色のドアを思い浮かべて言ってみたが、




「違うよ」



あっさり否定された。


なんなんだ一体。
せっかく俺がアホみたいな話に食いついてやってる、っていうのに。






元々ドラえ○んなんてよく知らない。



他にどんな道具があったか、考えていると……




「22世紀には、ド○えもんが生まれるんだよ」



ソイツは笑顔で言って来た。



『は?』



あぁ、また"はぁ?"って言ってしまった。
コイツと喋るといつもそうだ。



「だってドラ○もんは22世紀から来た猫型ロボットなんだよ?」



そう俺に教えてくれたけど、生憎俺だってそのくらい知ってる。





『22世紀に出来るんじゃ……


お前も俺も、ドラ○もんには会えねぇな』



ちょっと笑って言ってやると、




「そうなんだよね……」



肩を落としてしまった。

オイオイ、本気にしてんのかよ……




『お前は、ド○えもんの何が目的なんだよ』


本題に戻して、聞いてやる。



「な、に…って……


教えない」



オイ、ここまで来てそんなのアリか?


負けず嫌いの俺は、意地でも聞き出してやりたくなった。







『いいから教えろ、って。

どうせ大したことないんだからさ』




「……そんなことないもん…」




『じゃあ教えてみろよ』



コイツ、譲らねぇ。
おかしいな。俺の言うことなら大抵なんでも聞くヤツなのに。




だってコイツ、俺のことが……



………ん?




ドラえも○って、何でも出来るんだっけか?



本当に何でも?




…だとしたら、単純なコイツの頭の中なんか……
たかが知れてる。





『好きな人と両想いになりたい、とか?』



そう言ったら、驚いて、頬を一瞬で赤く染めた。


ビンゴ。



どうりで俺に言えないわけだな。




『そんなの、未来のロボットに頼むようなコトかよ。』




そう言うと、俯いてしまった。



『自力でアタックして、自力で……


告ったらいいじゃん』



「だって……っ!



自力なんかじゃ、どうにもならないから……」



やべぇ、コイツ…泣きそう。






「…でんわ……」




『へ?』



すると消え入りそうな声でソイツは言った。
電話、って、なんだ?








「もしもっ、私とその人が……両想いだったら、って…」



『もしも?』



「も、しも……」




"もしも"。

知ってる、ソレ。
んで………電話、だろ?



そんな道具、あったな。
"もしも○○だったら"ってやつ………



『もしも、ボックス?』



ゆっくりと頷いたソイツに、思わず口元が緩む。




『もしも、じゃダメだろ。

そんな機械に頼って人の心動かすんだ?』


追い詰めるように言ってやると、



「っ〜〜…」



悔しそうに涙目でみて来るソイツにでこピンをくらわせて。



「いっ、たっ…!」





『頑張ってみろよ。自力で。


案外いけっかもよ?告ってみれば?』



それは、俺の本心。


もしも、君から告られたら……


俺はすぐOKするんだろうな。



意を決したように口を開いた彼女に向き合って。



もしも、付き合ったとしたら……なんて、


理想を膨らませてみた。



END


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ