短編夢2

□kiss
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身体を求めることと、愛の大きさは、


比例しますか?



【kiss】




『待って……ねぇ。


今日は私から、させて』



唇を近付けて来た彼を止めて、そう言った。



「へ?

……なんで」



『いいからっ!』



いつも私ばっかり気持ちよくなっちゃってるし、

……私ばっかり泣かされて……


ズルイと、思う。



「何にも出来ないでしょ、お前」



上から目線で言って来る彼に、少し強気な視線を返して。



『できる、もん…』




「へぇ。

じゃあしてみれば?」



彼は私から手を放して、力を抜く。



「キス、してよ。



俺を気持ちよくして?」



薄く笑って言って、ゆっくりと目を閉じた。



私は彼の唇に、自分の唇を押し当てる。




……あれ?



どうしたらいいの、このあと。

触れるだけ、じゃ気持ちよくなれない、よね?



いつも彼、どうしてくれてたんだっけ……




どうしたらいいか分からなくて、とりあえず一度唇を離す。






「……終わり?」



ニヤニヤとあざ笑うようにこっちを見る彼。



やっぱり、悔しい。




もう一度くちづけて、舌を出してみた。



…けれど。
彼の唇は閉じたまま開いてくれない。



行き場のない舌がどうしたらいいのか分からずにまた唇を離す。




『ねっ……、口、開けてよ…』




「俺いつもお前に"口開けて"なんて言うっけ」




絶対楽しんでる。何も出来ない私のこと、馬鹿にしてる。



私は普段の彼の動きを必死で思い出しながら……




唇を合わせて、何度かフレンチキス。



チュ、チュッと短い音がする。



ここから、どうするか。
いつも、どうされてるか。




必死で考えて……




あ、いつも、唇舐められるんだ。



私は舌をのぞかせてゆっくりと彼の唇の合わせ目をなぞる。
それから自分が少し口開けて、彼の下唇を軽く挟む。



フニフニと、柔らかな感触。
彼の息遣いがこんなにも近くに聞こえる。




それからツン、と舌を尖らせて彼の唇をつつけば、彼はうっすらと口を開けた。



……やった!






その隙間から、彼の口内にお邪魔して、舌を探す。




段々鮮明に戻ってくる、彼の舌の動きの記憶。



彼の舌の先と自分の舌先を合わせて、そこから絡めとる。






柔らかい舌の感触が気持ちよくて、こっちが酔ってしまいそう。




上あごに舌を滑り込ませて……舌の歯を順番に舐めると…




「ふっ………」




彼が微かにくぐもった声を出した。


イケる。いい感じ。



今度は彼の舌の裏側を丁寧に刺激して、舌を吸ってみる。



そう。これ、いつもやられると気持ちいいの。



「っ……ん……」




ほら、彼も同じ。

声出してる……




可愛い、な。




優越感を感じて、嬉しくなるけど、でももう限界。



息、苦しいっ……!




最後に上あごを一舐めして唇を離せば、私たちの間を糸が繋いだ。


すぐにプツリと切れて、彼の口の端から唾液が伝う。




『ハァっ……ね、どう……だった…?』



まだ呼吸の定まらない口で聞いてみると、




「………」



彼は無言で、目を逸らした。






『アレ?どしたの?』



今度は私が、ニヤニヤ顔で問い詰める。




「別に………」



いつまで経っても褒めてくれない彼。



私が、拗ねたようにそっぽを向いてみれば、




「………俺、いつもあんなコトしてんの……?」



真っ赤な頬で、消え入りそうな声で、そう聞いてきた。




『そうだよ。


ね、どうだった?』




再び彼に近寄って聞いてみれば、




「………よかった…」



口元を押さえながら、言った。



私がいつまでもニヤけているから、ムカついたらしい彼が唇を押し当ててきて、




『んっ……?ぁ、う………』




とろけるほどの、キスをされた。




『はぁっ……』




唇が離れて、彼の一言。




「…俺って、キス上手いんだな…」




確かに、そう。
貴方を感じさせたのは、貴方のテクニック。



「こっから先は、俺が、

……ね?」



今夜も、また、変わらず貴方に啼かされる。


END




2008・11・8


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