短編夢2

□rhythm
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毎日俺のドラムを聴きに来る女の子。



毎日毎日飽きないな、本当に楽しそうに聴いてくれるな。


嬉しい、俺。
今まで誰も聴いてくれる人なんていなかったから。


俺のリズムを、理解してくれる人なんて、初めてだったから。



凄く、凄く嬉しい。




その嬉しさを、ドラムで表現した。

いつもより激しいリズムで、俺の手が、右足が跳ねる。




頭の中に、ポンポンと溢れだしてくる譜面。

何の曲に合わせてるわけでもなく、ただ思い付くまま…




「すごぉい……」




そしたら横に座ってそれを見ていた彼女が言った。




「先輩、ドラム習ってたんですか?」




『いや、独学』




「えっ……!
嘘、上手すぎ。私音楽なんかちっとも分からないけど、上手いと思います!」



目をキラキラ輝かせる彼女にべた褒めされて、ちょい照れる。



いいな、この感じ。



俺、好……



す?



好き?



彼女のこと、好きなの?



俺は、自覚してしまった。




彼女が好きだってこと……



『今日はもう終わりな!
また明日…』



終わり、と告げると悲しそうに眉を下げる彼女。



『……一緒帰る?』




そう言うと一瞬驚いたあとパァッと笑顔になる、彼女。




俺、期待しちゃっていいかな?

自惚れても………





二人肩を並べる帰り道。



俺はスティックを振り回しながら、彼女と喋ってる。

何気ない話が、楽しい。



ふと会話がとぎれて、無言になった俺たちは、横目でお互いを見た。



目が合ったことに驚いて、勢いよく逸らすけど……



アレ?この感じ……


知ってる。




確か、小学生の初恋。


俺たち、小学生の男女みたいだ。



意識してんだけど、何も言えなくて、無駄にドキドキして……



気付けば俺の手からはスティックが滑り落ちてた。
木がアスファルトにぶつかる音。




その代わり、俺の腕の中には……愛しの彼女。




二人ぴったり、奏でる心臓の音は…ドラムより速い。



ドラムより繊細に、これから始まる旋律を導こうとしていた。


END

2008・10・29

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