短編夢3

□Any you
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『さいっあく…』





とりあえず、帽子をかぶった。だけどそれでいつまでも隠せるわけがない。






「うっすー…



お前なに帽子なんかかぶってんの?」






『へっ、や、とんないでぇっ!』






【Any you】








彼が奪おうとした、帽子を慌てて両手で死守。






「なんだよ。家はいんだからとればいいじゃん」





『や、まだいいっ』







そう、今日はデート(彼のお家だけど)
気合いを入れて前日に髪を切った私は…





見事に、切りすぎました。






「…へんなの。

まぁ入れよ」





『お邪魔しまぁす…』






不信そうに見てくる彼の目が痛いιι






でも、いつまでも帽子かぶってるわけにもいかないし!
どうしよう、絶対笑われるよぉ…







「お、決勝始まってるし」





彼はテレビをつけて胡座をかく。
その横にちょこんと座って画面を見ると、高校野球の決勝戦のようだった。






カメラが球児たちから切り替わって、スタンドの応援席を映す。
メガホンをたたくたくさんの女子生徒の姿。






ふとアップで映った女の子が、丁度私と同じような髪の長さだった。







『あ…』






「ん?

可愛いけど、俺的にはこの髪の長さは無いなぁ」






彼の何気ない一言に、私の目の前は真っ暗になった。




まだ、この髪型見せてないのに…






これじゃ余計に見せられない!







『わ、私帰るっ!』






「えっ、ちょっ、おい!!」





走って部屋を出て行くけど、すぐに腕を掴まれた。





「どーしたってんだよ…」




眉をひそめる彼に、私は自分から帽子をとった。





「えっ…」






『髪、切ったの。失敗しちゃった。



でもこーゆうの、嫌、なんだよねっ…』







開き直ったように強がって言うけど…ヤバい、泣きそう。





そしたらぐいっと引き寄せられて、気づけば彼の腕の中ー…







「…バッカじゃねぇの。




いいか!?俺はお前ならどんな髪型だって服だってどーなったって好きだしっ、どんなお前でも受け止められっから!




お前がどんなでも嫌いになるとかありえねーの!」






怒ったように言う彼の言葉に、涙が溢れた。





「確かに俺短いの好みじゃなかったけど、




あの…その、


お前は、似合ってる。可愛い」






そう言って顔を背けた彼の耳は真っ赤だったから。






思わず笑って、二人で笑顔になって。







すっごく幸せだと思った。





(こんなにいい思いできるなら、たまには失敗も悪くないね)




END


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