短編夢3

□World's most
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「ことしも、よろしく」




年が明けて、その瞬間、キス。





『っ、ん……




こちらこそ、よろしくね』





【World's most】






家を出て、二人手を繋いで歩いていく。
地元の、小さな神社。



元旦にたくさんの参拝者でにぎわうようなところじゃなくて、本当に小さい、境内しかないところ。





こんなところ、来るのは私たちくらい。





「あいっかわらず寂しい〜!」




『だね…』





繋いでいた手を離して、財布から小銭を取り出す。





『えいっ』





2mほど離れたところから賽銭箱に小銭を投げ入れた、つもりだったけど入った音がしない。




『あれ?』





「今、入った?」




二人で賽銭箱に駆け寄って覗き込んでみると…





「ちょ、お前コレ凄くね!?」





『…うそぉ…』





私の投げた5円(ケチでごめんね!)はうまいぐあいに賽銭箱の溝と溝の間に引っ掛かってた。







「こりゃあ今年、すっげーいいコトあるかすっげー悪いコトあるか、どっちかだな」




『い、いや、いいコトだから絶対っ!』





「わっかんねぇよ〜?」




私をからかう彼を横目に、私は5円をとって今度はちゃんと入るように入れた。





彼も小銭を入れて、二人で手を合わせる。





「あっ、ガラガラ!


鳴らしてねぇ!!」





"ガラガラ"というのは神社のおっきい鈴のこと。




私たちは一緒に縄を握って、それを振った。




勢いよく、鈴が揺れて音が鳴る。





そして再び手を合わせて……







「なぁ、何、願ったの?」




帰り道、そんなことを聞いてくる彼。





『えぇ〜?…そっちはぁ?』





「俺?



俺は………






教えない」





『なにそれぇ!』





騒ぎながら歩く私たちを、街頭だけが照らす。





残念ながら、月も星も、見えないけど…






「俺、お前のお願い、あててやろーか」




『はっ?』





笑いながらそう言った彼の顔は明るい。








『あ、当てられるわけ、ないじゃん』





「んー?それはどうかな?



"俺とずーっと一緒にいられますように"だろ?」






………な、なななんでっ!?





「ホラ、図星だ」





顔、熱くなる。
道が暗くてよかった……




『ちち、違う!そんな願いごとっ…』





「わっかりやすー。



お前の考えてることなんて、すぐわかんだよ、俺は」





からかうように笑われて、やっぱりこの人には、かなわないと思う。




「んじゃあ、俺の願いごと当ててみ?」




こっちを見ないまま私の手を握る力を強くした彼に、





『……私とずっと一緒にいられますように?』




悔し紛れにそう言ってやった。





「…まぁ俺たち…




似た者同士って、ことだな」






『…え?』






ねぇ、それは…



私と同じお願い、したってこと?





"私と一緒にいられますように"って、願ってくれたの?







思わず顔がニヤけちゃって、それを見た彼に"気持ち悪い"って言われた。






「ねぇ」





もうすぐ言えにつく、というところで呼ばれて振り替えれば、





「ずっと、一緒いような」




照れ隠しのキスが降りて来て、





『うん、ずっと、一緒』





もしかしたら私は、世界一幸せなんじゃないかと思った。





END


 

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