短編夢3

□To Santa Claus?
1ページ/1ページ




……世間的に言えば、もうすぐクリスマスらしい。



だけど仕事で走り回る私には、そんなの関係なくて。




【To Santa Claus?】





『最っ悪』




雪、降って来た。




いや、まだクリスマス当日じゃないのよ?
なのに、駅前のツリーはピカピカだし、さっきからカップルばっかり擦れ違うしさ。




まるでホワイトクリスマス?だなんて……



ううん、クリスマスなんて私には縁のない行事。
だって今年は、仕事のスケジュールいっぱいだし…




去年は、彼氏と過ごした。



彼氏と言っても、たいして好きじゃなかった人。
親に勧められた、エリート企業のお金持ち。




三年前、私には本当に好きで付き合っていた人がいた。


その人は、一途に夢を追いかける、どこまでも真っ直ぐな人。


お金は無かったし、家事全般を私に任せっきりだった。



ささやかでも幸せな生活だったけど、収入は私のほうが上。




私の未来を心配した親が、別れろ別れろ、ってうるさくて、ついにはお見合いまで用意して。







私は大好きだった彼氏に、仕方なく別れを告げた。
嘘、いっぱいついて……






って!!なにクリスマスの思い出なんか語っちゃってんのよ!!



関係ない、とか言っといて……




ちょっと目尻が濡れたのを、雪のせいにして。
私はスタスタと歩いた。





でも、次の瞬間、私は目と耳を疑う。





「あのー…すいません。




落ちました、よ?」




後ろから肩を叩かれて、振り向くと、サングラスをかけた男の人。



その人の手には、私がいつも持ち歩いてるシステム手帳。




『あ、ありがとう、ございます……』




受け取って、思い出す。
というか、思い出が鮮明になっていく。



姿も、声も、微かに触れた指先の感覚も。





三年前に別れた、あの人ー…




『じゃ、俺、急ぐんで』







「えっ、あっ……」





そう言って走って行ってしまった。




私は暫く、仕事のことなんか忘れて立ち尽くした。





(私は、どうしたいの?)




(もう一度、彼と……)






やり直し、たい?






彼の番号なら、まだ覚えてる。
もう変わっちゃってるかもしれないけど。





でもね、私、弱虫だから。




電話をかける、勇気が出ない。






私がサンタクロースにお願いするプレゼントは…




勇気?



それとも、貴方自身?




(サンタさん、お願い)



(クリスマスに奇跡を!)





やっぱり、仕事に追われるクリスマスなんて、つまらない



END



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ