御題

□意外にも信頼関係(志摩出)
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「…な…何よ!」


何故、と聞かれてもよく分から
ないだか、ただ私がベッドの上
で志摩に押し倒されている事実
だけは分かる。


「出雲ちゃん、あんま俺を
なめとったあかんと思うで。」


それはいつものヘラヘラした
馬鹿の笑みなんかじゃなくて、
卑しい笑み。それに魅了され
そうなのがなんだか悔しくて
恥ずかしくて熱い顔を反らす。
右も左も志摩の腕。やはり
筋肉質というわけではないが、
がっちりしていて引き締まった
男性的な腕である。それが今の
現状に陥った事を物語っている
のかもしれない。


「出雲ちゃんもこんなん嫌い
ちゃうやろ?」


そう言って、指先で髪を絡め
取られたりすかれたりするのが
気持ち良くて漏れそうな声を
理性で固めて呑み込む。今以上
の虚勢はないと思うけれど、
今まで以上の虚勢を張る。



「馬鹿言わないで。みんなアンタ
みたいに煩悩塗れじゃないの。」

「…せやったらやってみよか?」

志摩は私に顔を近付かせて僅か
3センチあるかないかの至近距離で
ピタリと止まりそう囁く。
生暖かい息が吹きかかりとても
くすぐったい。正直、あまり
嫌ではないのだが今は駄目だ。
お互いまだ早過ぎるのだ。
それは年齢の問題さえ二の次
な次の難題で。


「ふん、馬鹿じゃないの?」


私は薄ら笑いを上げる。
私は彼を知っている。

「アンタはそんな事出来ない。
知識だけが塊の経験のない
ヘタレた変態野郎だって事。
見え透いた見栄張るいとまが
あるなら虫を退治出来る勇気
でも買って来れば?」


なんて可愛いげない事を口に
すれば、きょとんとした顔が
見え瞬間、彼は即座に崩れ落ち
私にのしかかる見事に間抜けな
態勢に変化する。


「…ちょ、重いんだけど!」

「あー出雲ちゃん、ずるいわ!!なんでそーゆー事言うんかな、
せっかくこっちが勇気出して
言い寄ってるんやから…」


顔を上げて(心持ち程度半泣き)
泣き言を抜かすこのヘタレた
変態に先程纏まりついた卑しい
雰囲気は何処にもなかった。



【おわり】


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