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□陽炎
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「あ、土門ー」

「一之瀬!」

俺は一之瀬の手を引き連れて走った。

「え、土門、どうしたの?」

俺はマンションの階段を上った。

「 あっ」

瞬間、一之瀬の手が解けた。

一之瀬は

そのまま階段から落ちた



「一之瀬!」

「なーにー土門」

「今すぐ俺の家に行こう、早く!」

「なになに、どうしたの」

一之瀬を家に連れてきた、家ならきっと大丈夫だ。

「土門ー、窓開けてもいい?」

「ああ、いいぞ」

一之瀬が窓を開けた瞬間に、

一之瀬が窓から落ちた。



「一之瀬、今日は帰ろう、送っていくよ」

「え?別に送ってくれなくても大丈夫だよー?」

「いいから、俺がそうしたいだけ」

どこか行くのは危険、だったら家に帰らすだけだ。

「じゃあねー土門」

「ああ、じゃあな」

多分、これなら大丈夫なはず俺が背を向けた瞬間

ボッ…

一之瀬の家が燃えた






何度世界が眩んでも陽炎が嗤って奪い去る

繰り返して何十年、もうとっくに気がついていたろ

「(こんなよく話なら、結末はきっと一つだけ)」

繰り返した夏の日の向こう



「一之瀬!!」

バッと押しのけ飛び込んだ瞬間トラックにぶち当たる

血飛沫の色、君の瞳と軋む体に乱反射して

文句ありげな陽炎に

「ざまあみろよ」

って嗤ったら

実によく在る夏の日のこと。


そんな何かがここで終わった。






目を覚ました8月14日のベッドの上


少女はただ


「…またダメだったよ」

と一人猫を抱きかかえてた
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