弾丸論破

□左右田に愛される
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私の父は、とても過保護だった。


友だちと遊ぶことはおろか、作ることさえ許されなかった


恋人なんてもってのほかだ


希望ヶ峰学園に入学することさえ反対されたくらい


でもそんな愛されることに恐怖を感じている私がこの学園で初めて恋をした


この気持ちを伝える気はサラサラない。

本当は恋をすること自体する気はなかった


だってそうでしょ?愛されるのが嫌なのに人を愛すだなんてことできない


だけど私の気持ちは言うことを聞いてくれなかった

する気もなかった恋をしてしまったのだから


なってしまったものは仕方がない。私が愛する”だけ”でいいのだから

愛されなければこの気持ちを持っていてもいいという甘い考えをもった


その恋の相手がすでに私を愛しているなどということも知らずに


「なぁ、いま暇か?」


左右田和一殿。


彼が私の初恋


どうして彼なのだと自分でも思ったが、好きになった理由もいまだにわかっていない


『暇というか、いまは作業の時間ですよわかってます?』


「おっまえ相変わらずかたいなー」


『触ってもいないのになぜわかるんですか』


「そ、そういうかたいじゃねーよ!!」


顔を真っ赤にして照れる彼

不覚にもかわいいと思ってしまう私はどうかしている


「作業の後だよあと!暇か?」


『作業後でしたら時間はあいていますが』


「ならその時間俺と一緒に過ごさね?」


『はぁ、いいですよ』


「よっしゃあ!!じゃあさっさと終わらしちまおうぜ」


その嬉しそうな笑顔に私はいつもつられて笑顔になってしまっていた


このような時間が永遠に続けばいいのにと儚い夢を持つことはいけないことだろうか


愛し愛される関係など求めずに、ただただ彼への愛をささげる


そんな私を滑稽だと笑うのだろうか


笑われてもいい。私は彼を愛す



「よーし!終わったな」


『では、発掘品は日向殿に渡してきましょうか』


「おー、ちゃっちゃと渡そうぜ」


発掘した品々を日向殿に渡すと、左右田殿は私の手を取り目的地も告げずに歩き出した


『そ、左右田殿!』


「あん?どうしたー」


『手、手は繋ぐ必要はないと思われます』


「お、おぉお!?わ、わりぃなつい」


『いえ、それほど気にしておりませんので』


「そ、そっか」


「『・・・・・』」


気まずくなってしまった


わ、私の余計な言葉のせいだろうか

いやしかし、言わなければあのまま左右田殿と手を繋ぎっぱなしになっていた


それだけは避けたい。

愛されてしまうかもしれないし・・


「っと・・・ここらへんでいいかな?」


『ここは・・・牧場ですか?』


「おう」


『どうしてここに?』


「おまえってさ、動物とか好きだろ?だからここに連れてきたんだよ」


『は、はぁ』


「だーっ!俺はお前とそんなに一緒に過ごしたことねーし、どこがいいかと悩んだ結果ここにしたんだよ!!」


悪いか!?っと涙目になり拗ねる彼はやはりかわいい。


思わず笑い。愛しさが止まらなくなった


気づけば左右田殿の顔に自分の顔を近づけ、唇同士が合わさっていた


慌てて離れるが左右田殿顔は驚愕に変わっていた


やってしまった。もう元のあの心地いい関係にはなれない

仮に彼が嫌がっていなくとも私のあの嫌な部分がでる・・・


どうか、どうかお願いこのまま何事もなくいって!!



そんな私の願いは儚く彼の一言で消えた



「好きだ」


『!?』


「俺お前のこと好きなんだよ」


『・・・ぁ・・・!?』


あっ・・あぁ!!でるやめてこないでお願い



「なぁ・・きいて『やめて!!!』!?」


『わ、わたっわたしをあいさないでよぉお』


「お、おい大丈夫か?」


『触らないで私を愛さないで!!や、やめて私が愛するだけでよかったのにどうして・・どうして私を愛してしまったの!?』


「なんでって・・」


『や、やだ閉じ込めないで暗いとこに一人ぼっちは怖いの・・怖いの!!だしてよぉ』


ボロボロッとみっともなく涙を流し恐怖におびえる姿はとても滑稽であろう


好きだと伝えてくれた彼との縁ももう終わりになる

こんな私をみて好きだと言ってくれる人などいるわけがない


父親に愛されすぎ、愛におびえるものだと誰も愛したくはないでしょう?


ふわっと私を包み込む優しい腕とても心地の良い体温・・・それと


「俺はお前のこと好きだ、でも閉じ込めたりとかそんなことしねーよ」


「だからお前も俺の告白を受け入れてくr『いい匂い』は?」


『左右田殿の匂いはとても安心する』


「〜〜っ!!?」


暖かいこの体温はすごく気持ちのいい。


彼は父のようなことはしない。そんなことわかりきっていた

でも身体に沁みついてしまっている恐怖はそれだけでは収まらなかった


だけど、彼に包まれているだけで私はこんなにも愛されたいと願う

彼に、彼に愛されたいの


首筋に頬を擦りつけ左右田殿の匂いを嗅ぐ

するとこすり付けている部分がだんだんと熱を帯びていった


「ちょっ・・おままて!これはいろいろと我慢できなくなるっつーか!!」


『左右田殿・・・』


「や、やわらかいところあたってるんですけど!!!」


『好きだ。愛しております左右田殿』


「!!!??」


『好き、好きです和一殿』


「わ、わかったからそのは、離れてほしいんだけど!い、いろいろと我慢が・・・」


『私はまだ和一殿を堪能したいです』


「なっっっ!!?」


『和一殿、和一殿』


「も、もう好きにしてくれよ・・・」


愛されるのを嫌った私は、あなたに愛されたことで愛される喜びを知りました


父からもらった愛には狂気が混ざっていましたが

あなたからの愛はとても暖かいものでした

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