短編

□兄貴と姉貴
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デカいカジノ内を歩き回るも相変わらずターゲットの男は来ない

「どうする?」

「今夜中にと依頼書に書いてあったからな…もし此処見つからない場合は他のやり方を考えなければならない」

「はぁ…めんどくせぇな」

歩く内にあの"インペラトリーチェ"が座る台へといつの間にか近付いていた
人混みが酷くなりプロシュート達は顔をしかめる
これほどまでに人を集める"インペラトリーチェ"とはどんな女なのか、プロシュートは好奇心に勝てず人混みを掻き分け、台に近付いた
人混みの向こうからリゾットがプロシュートの名を呼ぶのが聞こえたが今はリゾットより女を取ることにした


人混みを掻き分け一番前に出る
丁度インペラトリーチェの右横に出た様で賭けをしていた男の顔が良く見えた
もうこの世の終わりと言わんばかりの絶望的な表情を浮かべている

「(なかなか可愛い顔してんじゃねーか)」

そう思っていると不意に横を向いたインペラトリーチェと目が合った
するとみるみる顔を歪ませ突然席を立ち上がった

「か…帰る!」

人の顔を見て慌てて逃げるように帰るとはなんとも失礼だ
プロシュートは目尻をピクリとさせた
そそくさと逃げるように歩いて行く女の後を追った

高いヒールを履いている癖になんと足が速いことか
カジノ内では人混みにも邪魔され結局外まで追いかけることになった

インペラトリーチェはカジノの横に作られた広い庭に逃げ込む
人が全く居らず広々とした庭のお陰で簡単にインペラトリーチェを捕まえることが出来た
腕を掴み自分の方へ向けさせると女はまた綺麗な顔を歪ませた

「ちょっ…離しなさいよ!」

「オイオイオイオイ…人の顔見てそんな顔するのは失礼ってもんじゃねぇか?」

「わ…私は……私は…!…美しいモノが嫌いなのよ!」

力任せに手を振り払えば勢いのままプロシュートの鼻先に指を突きつけた

「あんたみたいな美しいモノが特にね!」

褒められているのか貶されているのかプロシュートは分からなくなる
呆けるプロシュートから距離を取り叫んだ

「ほんと近付かないで、無理。あんたみたいな美しいモノが近付くだけで私無理、イヤ、駄目!」

「てめえ…言わせておけば…」

プロシュートの顔が引きつる
目の前にいる女からはカジノで見せた女帝の風格は無く威嚇する猫の様に見えた
威嚇し睨み合う中後ろからリゾットのキレ気味の声がした

「プロシュート!」

思わず振り返れば苛立ちを隠せないリゾットが仁王立ちで構えている
舌打ちをし、リゾットから女に視線を戻すとそこには誰もいなかった

「プロシュート…!いい加減に…」

「…ッ…悪かったなリゾット、だからメタリカは勘弁してくれ」

今からちゃんと仕事をする
そう告げればリゾットは仕方がないと溜め息を付いた
暫くカジノで張っているとターゲットの男は現れ、仕事は思いの外簡単に終わった

そんな仕事の帰り道の事

「それにしてもあの女…」

「インペラトリーチェのことか」

「あぁ!あの女俺の顔を見て無理だの駄目だの言いやがったんだ!」

先ほどまで収まっていた怒りがまた沸々と沸いてきたのかプロシュートからは怒りのオーラが滲み出ている

「美しいモノが嫌いとかなんとか言いやがって無理だイヤだ駄目だと言ってくるんだぜ?失礼と思わないか」

「一応褒めてもらえてるじゃないか、別に気にする事じゃあないだろ」

「いや、あれは貶されてると見た」






怒りは収まらず今に至ると言うことだ


「…くだらねェ…」

ホルマジオとギアッチョは声を揃えて呟いた

「くだらねェだとてめえ等!俺のこの気持ちがわからねーのか!」

「分かるか!」

「でも美しいモノってかなりの褒め言葉だと俺思うんだけど」

いつの間にか鏡の世界から出てきたイルーゾォは苦笑いしながらプロシュートに答えた

「イルーゾォよお!要は言い方なんだよ!あの女まじで俺を毛嫌いしてやがった」

困った様に笑うイルーゾォは一番最初にこの話に食いついてきたメローネの様子が可笑しいことに気がついた




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