暫くDIOの部屋で過ごした後なまえは自室に戻っていた
DIOの部屋同様ほの暗い部屋
カーテンを少し開け窓を開ければカイロの町並みが一望出来、痛いくらいに輝く太陽の光が部屋に入ってくる
ずっとカーテンを開けておきたいぐらいだがそれは許されない
しっかりとカーテンを閉めた
部屋の所々に置いてある燭台に火を灯せば、生活出来るぐらいの明るさにはなる
ヴァニラ・アイスが運んでくれていたキャリーケースを開き荷物を片付けだした
服や生活に必要なもの
全てを出し終えた後のキャリーケースには古びた黒い本と女の子らしいデザインの日記帳が残されている
「…私って…なに…?」
寂しそうに1人呟き古びた黒い本の表紙を撫でた
誰も答える事のない呟きは闇に消えていく
日記帳と古びた黒い本を手に取りなまえはキャリーケースを閉めた
二つを抱えたままDIOの部屋同様の作りの良いベッドに飛び乗る
勢いのまま寝転び上質な布団の感触を感じていると自然と瞼が落ちてきた
そろそろディナーの時間ではないだろうか
そう思いながらも眠気には勝てずいつの間にか深い眠りに落ちていった
なまえの寝息だけが聞こえる部屋の扉が開いたのは数分後の事
部屋に入ってきたのはこの館の主であるDIOで自然となまえが眠るベッドサイドまで歩み寄った
顔にかかった髪を払えばまだ幼さが残る寝顔が目に入る
眠ったことにより自然と手から落ちた黒い本をDIOは手に取りベッドのそばに置いてあった椅子に腰掛け本を開く
本の中身は表紙同様痛んでいる箇所がある
破れていたり染みが出来ていたりするが内容はしっかりと確認できた
男の雑な文字で最初の数ページは日記のようなもので中身の文字は全てスペイン語で記されていた
何ページが捲っていけば中身は一変する
研究の結果を書き留める為の本になったのか日付から当時の温度や湿度、与えた薬の種類、量まで事細かく書かれ写真まで張り付けてある
するとあるページでDIOの手が止まった
古ぼけた写真
硝子で出来た天井に着いてしまいそうな程大きな筒
中は赤みがかった透明な液体で満たされている
じっと写真を見つめ指を這わせた
液体の中に浮かぶ小さなもの
女の細い小指の先より小さい異形の形をしたソレは人間とも動物とも言い難い醜い姿をしている
それなのにDIOは愛しそうに、だがどこか切なそうに指で優しく優しく写真を撫で続けた
暫くし自然と眠りから覚めたなまえは目を擦りながら体を起こす
ベッドの傍で長い足を組み黒い本に視線を落とすDIOの姿が目に入った
「……パパ…?」
どうして部屋に、と続けようとするがDIOが先に口を開いた
「下に降りるぞ…。今夜のディナーは…お前の為にとテレンスが腕によりをかけたらしい…」
「…ん……今すぐいく…」
小さく欠伸を漏らしベッドから降りるとDIOに背を向け扉に向かう
扉のノブに手をかけた時DIOが来ない事に気が付きなまえは振り返った
「パパ、行かないの?」
「…いや…行こう…」
パタンと本を閉じ、ベッドの傍のサイドテーブルに置く
表紙を指で撫でなまえの後を追った
夜になり風が出てきたのか開けたままの窓から夜風が入る
強い風が入り込み大きくカーテンを揺らし風はベッドまで届き天蓋を揺らす
風はサイドテーブルのあの黒い本まで捲り最後のページが開いた
プロジェクト
"ni~no de Dios"
(ニーニョ・デ・ディオス)
"神の子"と称された計画
謎は全て本の中に
Our story goes on...
2012.08.22