ステッラカデュート ブック

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「貴女のクラスは○組よ。HRが始まるから早く行ってね」

職員室でそう言われたのはつい先程の事
早く行けと言われたのにも関わらずなまえは今違う所にいる

無駄に真っ青な空を見上げながらうんと伸びをする
錆びた金網に張り付き誰もいない校庭を見下ろした



「リナッシェレ ヴィータ」

呟くように呼べば真っ白な彼は傍に姿を表す
そっと寄り添う様に自分の分身に頭を預ける
ふわふわと白のローブが揺れるだけで自分の分身は何も言わない
無言の世界でただただ時が過ぎる
そんな時錆びた屋上の扉のノブが回される音が耳に入った
意識しリナッシェレ ヴィータを自分に戻した


扉が重たい音を立てて閉まると屋上のアスファルトをコツコツと音を響かせながら歩く音がした

振り返れば今朝の学ラン男

向こうもポケットから煙草を出しながら歩いていたようでなまえには気付かなかった様だ
煙草をくわえ顔を上げ視線が合った時学ラン男はピクリと眉を動かした

どーも、と手を挙げて挨拶すると学ラン男は無視を決め込み煙草に火をつけ紫煙を肺に吸い込んだ



「てめえ此処で何してやがる」

そう声を掛けられたらのは彼の煙草が半分ぐらいになった時だった

「…迷子になって」

全くの嘘だ


「此処に辿り着いたのでぼーっとしてました」

彼は興味が無さそうに紫煙を空に吐き出す

「そう言う貴方は?」

「俺は煙草が吸いたかっただけだ」

短くなった煙草をアスファルトに投げる
長い足で火をもみ消し学ラン男は影に腰を降ろす
寝る体勢に入ったのか学帽を深めに被り頭の後ろで手を組んでいる




無言の時が続く中、なまえは飽きもせず校庭を見つめていた

そんな様子が気にかかったのだろうか学ラン男は学帽を少し上げなまえの後ろ姿を見た


「飽きもせず良く見られるな」

「…初めてなんです本物の桜を見るのが」

図鑑で写真は見た事ありますけどね


そう続けなまえは振り返り学ラン男に視線を向けた

「国外育ちなもので」

柔らかく笑いまた校庭の方に顔を向ける
無言が暫く続き、ふと時計を見るとあと15分程でチャイムが鳴るような時間になっていた




金網から手を離し真っ青な空に向けまた伸びをひとつ

ローファーを鳴らしながら校舎の中へと続く錆び付いた扉に歩いて行きノブに手をかけた







「おい、お前」

低い声が屋上に響く

「はい?」

「名前」

「……」

「………てめえの名前は?」


あぁ彼は名前を聞きたかったのか
日本語とは難しいな
クスリと笑い彼がまだ座っている方であろう場所に向け声を掛けた


「みょうじなまえです。…学ラン男さん、貴方のお名前は?」

声は返ってこない
やれやれと肩をすくめ重たい扉を開けた
重たい音を立てて扉が閉まる中彼の低い声が耳に届いた





「空条承太郎」


クスリと笑い今朝感じた何かを心に留めながらなまえは階段を降りる
屋上から十分離れた場所で無表情になまえは携帯を取り出しある人へ電話を掛けた













「ハロー…"パパ"」













これが星を受け継ぐ者との奇妙な物語の始まり




Our story goes on...

2012.08.12



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