「プロシュートが任務失敗したって?」
ケラケラと笑いながらアジトに入ってきたメローネにソファのド真ん中を陣取って座っているプロシュートは顔をしかめた
「失敗してねェよ、殺る奴ァ殺ってきた!ちょっと気になる女逃がしただけだ」
「ぷぷーっなんだよ女に逃げられたってえ?百戦錬磨のプロシュートも形無しだなー」
向かいのソファに座りニヤニヤと笑うメローネ
その隣ではギアッチョが雑誌を捲りながら舌打ちをする
「うるせーよメローネ!黙れ!」
「だって普通にウケるだろ」
「ウケるけどそこまでにしといた方がいいぜぇメローネ」
ホルマジオが割って入りメローネとギアッチョが座るソファの背に手を掛け、反対側のソファに座るプロシュートに指を指す
整った顔を凶悪と言う言葉が似合うほど歪ませている
冷や汗を滲ませ顔を引きつらせるメローネはプロシュートが女を逃がしたと言われる任務の時にペアを組んでいたリゾットに慌てて声を掛けた
「リ…リーダー!一緒に任務行ってたんだろ?なんでプロシュートがこんなに怒ってんの?!」
パソコンを置いてあるデスクに座って書類と睨めっこしているリゾットに助けて、と寄っていく
「あぁ…あの事か。まだ気にしているのかプロシュート…」
額に手を当て溜め息をつくと書類をデスクの上に置き、プロシュート達の方へ向く
「確か3日前の任務だったな、ターゲットはカジノ王。どうやら影で敵対するギャングに投資していたらしくターゲットになった…」
遡ること3日前
プロシュートとリゾットはペアを組み、カジノに忍び込んでいた
「リゾット、居たか?」
「いや…」
ざわつく店内を見渡すがターゲットである男の姿はない
「…まだ来ていないのか」
このカジノを仕切る男が敵対するギャングに投資をしていると分かるとすぐに任務を言い渡され、今日その男の始末に来たというのに姿を現しておらずプロシュートとリゾットは眉をひそめた
「やだお兄さん達男前ね」
そんな時女特有の高い声が聞こえプロシュートとリゾットの腕に細く白い腕が絡み付いてきた
「私達と一緒にやらない?」
ドレスを身に纏い綺麗に着飾った女2人が絡んできたのだ
年齢は20代、顔は中の上といった所か
「ブォナセーラ、美しいシニョリーナ達」
「美しいだなんて」
「ふふっ、嬉しいことね」
プロシュートは手慣れた様子で女達の手を取り手の甲に口付けをする
その様子にリゾットは頭を痛めた
「美しいシニョリーナ達、残念だが俺達は探し物をしていてね」
「えー…」
「そんなに残念がらないでくれ。俺もとても残念なんだ…良かったら探し物が見つかった後にでも…どうだい?」
「そ、そうね!探し物が見つかったら是非一緒に」
「私達インペラトリーチェを見てるから声を掛けて!」
「インペラトリーチェ…?」
プロシュートとリゾットは顔を見合わせた
「インペラトリーチェを知らないの?ほら、あそこの台にいる金髪の女性よ」
女が指さす方を見れば一つの台にかなり人が集まっている
理由を聞けば時々しか現れない"インペラトリーチェ(女帝)"と呼ばれる女が来ているらしい
そしてこの女と言うのもこの当たりのカジノでは負け無しで彼女と賭け事をした者は一文無しになるまで全てを持って行かれると言うのだ
綺麗な金髪を背中まで伸ばしいつも右耳に髪を掛けていてその美しい容姿と相俟って"インペラトリーチェ(女帝)"と呼ばれていると言う
その話を聞き声を掛けてきた女達と分かれた
少し女達に絡まれただけでリゾットはすごく疲れた顔をしている
そんなリゾットを余所にプロシュートは"インペラトリーチェ"と呼ばれる女が気になって仕方がなかった