短編

□彼と彼女の宿題事情
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目の前にある大きな背中にタックルハグを仕掛けてみる
もちろん自分より30cm以上デカい男なのでびくともしない

「暑いんだよ離れろ」

「そんな暑苦しい格好してるのが悪いんじゃあないかな」

このクソ暑い中相変わらず改造学ランに袖を通している

「デートしようよデート」

「断る」

そう言うだろうと思った
残念そうになまえは体を離す
大きい手に腕を取られドデカい空条邸の廊下を進む

なにせ今日はやりたくもない夏休みの宿題と言う魔物と戦うべくして空条邸に来たのだが宿題が大量に入った鞄を此処まで持ってくるのにHPはほぼ0になっていると言っても良い

デートで承太郎を誘惑するも自分の魅力では不可能だったらしい
承太郎に掴まれていない方の手に持っている大量の宿題を憎々しげに見つめた




承太郎の部屋に着き扉を開けるとほどよい冷気が流れ出してくる
思わず手に持っていた鞄を放り投げ承太郎のベッドにダイブした

「…今ならのび太君もビックリなぐらいの早さで寝れる」

肌触りの良いタオルケットを頭まで被り体を丸める
煙草の匂いと承太郎の香りが鼻をくすぐるのがどうも気恥ずかしい

「てめえ…ッ」

承太郎の地を這うような低い声が聞こえたかと思うとタオルケットを勢い良く捲り取られた

「あぁ…!そのタオルケット気持ち良いのにっ」

体を起こし承太郎の顔を見ると呆れきった顔をしていた

「なまえ…てめえ此処に何しに来た?」

「宿題しに来ました」

今日の迷惑なメインを忘れた訳じゃあない

「分かってんじゃねえか。さっさと終わらせるぞ」

目線だけで降りろと指示する
従うしかないと頬を膨らませながら這いずるようにベッドから降りた





暫く真剣に宿題に取り組んでいたものの嫌いな数学をし始めた所から全然ペンが進まなくなっていた

「…承太郎…ここ分からない」

先ほどからこの言葉を何度も発している

「…どれだ…。馬鹿かてめえは、これはさっきの応用だ」

不良のクセに何故勉強も出来るのか不思議でならない

「………もうヤだ数学…数字見てるだけで目がダメ」

問題集の上に倒れて突っ伏する
臨界点突破しそうななまえを見て承太郎は溜め息をつきながら優しい手つきで頭をぽんぽんと叩くよう撫でてきた

「あと少しだろ、終わらせちまえ。そしたらデートでもなんでも付き合ってやるよ」

少し恥ずかしそうに承太郎が言うと伏せていた顔を上げる
歓喜に体が震えた

立ち上がり机を踏み越え承太郎に勢い良く抱きついた
不意に勢い良くきたせいで受け止めきれず後ろに倒れなまえが押し倒した様な状態になった


「大好き承太郎っ!」

「おー」

ぽんぽんとリズム良く背中をトントンされる
ぐりぐりと胸板に頬を押し付けてふにゃっと微笑んだ
抱き締めたまま上半身を起こしなまえを膝の上に乗せたまま机の方へ向かせる
机の上に散乱したなまえの問題集に手を伸ばし引き寄せるとなまえの後頭部にキスを落とし腹に手を回す
耳に唇を寄せて呟いた






教えてやるからさっさと終わらせろよ

でないと外に出る時間が無くなるだろ




最後に耳にキスを落とすと急いでシャーペンを手に取り問題集に向かうなまえ
優しく頭を撫でてやれば嬉しそうな声を上げた




暫くし承太郎がなまえの手元を見る





「…ッ…てめえ…間違ってるじゃあねぇか!」

怒鳴り声が空条邸に響き渡りなまえの鳴き声が聞こえたのはすぐ後の話


2012.08.14


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