ステッラカデュート ブック

□07
1ページ/1ページ



カイロに着いてからなまえは休まることは無かった
DIOの部下達がなまえとの謁見を望み、わざわざ遠くの国から会いに来る者までもいた
なまえの姿を見た部下達の口からは賛美する言葉が飛び交いその度になまえは困ったように笑うのだ


落ち着いたのは帰国の1日前だった

金の髪を揺らしながら数日前出したばかりの物をキャリーバッグに詰めている

「なまえ様、此方のドレスやアクセサリー類はいかがしましょうか?」

数着手に持ってドレスルームから姿を表したテレンスに顔を向ける

「あぁ…それね…」

煌びやかなドレス
宝石や豪華なアクセサリー
謁見を望んだDIOの部下たちがなまえにと持ち込んだものだ

「申し訳無いけど…」

献上してきた者には悪いがなまえは必要ないと首を横に振る
それを見たテレンスは優しく微笑み手に持っていたドレスを元の場所に戻しにいった


荷造りと献上品の選別が大方終わるとなまえは小さく伸びをして椅子に座ると背もたれに体重をかけた
香しい紅茶の匂いが鼻を擽りテーブルに目を向けるとテレンスがお茶の用意をしてくれている

「ありがとうテレンス」

「お口に合えば幸いです」

一口口を付ければ紅茶のいい匂いが口に広がり自然と笑顔になった

「おいしいっ」

その一言にテレンスも笑顔を浮かべる

「なまえ様、日本は楽しいですか?」

「うん楽しいよ、授業は簡単過ぎて受ける気しないけどね。お友達出来たしすごく楽しい」

「お友達ですか、それは良かった」

どこかほっとしたようなそんな笑みを浮かべるテレンスになまえは小さく頭をかしげる

「遠いところにお一人で行かれ…心配しておりました」

「…子供扱い?」

「まさか立派なレディの扱いですよ」


にこりと微笑みテレンスは、空になったカップに新しい紅茶を注ぐ
釣られて微笑み新しく注がれた紅茶に口を付けた

「はー…幸せ…ここに居ればテレンスの入れた美味しい紅茶が毎日飲めるのに」

「勿体ないお言葉をありがとう御座います。いっそこのまま残ってしまわれれば?」

クスクスと笑いながらそんなことを言うテレンスになまえは吹き出す


「ふふっ、残りたいけど駄目よね…パパに怒られちゃうわ」

「そんな事ありません。DIO様もなまえが御傍に居られれば嬉しいのですよ」

「……それはないよ…。パパは…私の事嫌いだから…それに私はあの人の道具よ」

「違いますなまえ様!…DIO様は…家族として娘として貴女を…!」

寂しそうに表情に歪ませ声を荒げた時テレンスはハッと目を見開いた
今まで部屋には自分となまえ以外居なかった筈なのに机を挟みなまえの反対側にはDIOが座り紅茶を口にしている

「…DIOさ…ま…っ!」

「テレンス…コレに必要のない事は教えるな、コレは私の道具だ」

口元を歪ませ鋭い眼光をテレンスに向ける
口を噤むテレンスになまえは小さく笑いかけた

「ね?気にしないでテレンス。…私はあなたの道具よパパ、分かってるから」


寂しそうに目を伏せぬるくなった紅茶を飲み下した


暫く無言のお茶会をしているとヴァニラ・アイスがDIOを呼びに来た
どうやら数人の部下が謁見に来たらしい

「…テレンス来い」

「…はい」

頭を下げたテレンスはなまえの方に向き直り頭深々と下げDIOの背を追い歩き出した
ヴァニラ・アイスも後に続き部屋から出て行くと部屋はシンと静まり返った


静まり返った部屋は独り残されたなまえの心に闇を生む
息苦しささえ感じる闇になまえは顔を歪ませ机に突っ伏した


「孤独…なんて、ね」

慣れているはず…慣れているはずなんだ…



慣れている筈なのに苦しくて寂しくて仕方がない


いつの間にか身についてしまったこの負の感情にどう対処していいか分からない


グッと顔をしかめ顔を伏せた



「…苦しいよ…助けて…じょーたろ…っ」


今は離れた日本にいる友人
いつも傍に居てくれる彼の名前を呼んだなまえの小さい叫びは闇に消えた


Our story goes on...

2012.09.13



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ