ステッラカデュート ブック

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私には記憶がない

良くある話の事故をして記憶がないとか精神的な問題で記憶が飛んでいるとかではなく
私には記憶がないのだ

一番古い記憶は

2年ほど前に"父"が私を膝の上に乗せて物語を語ってくれた事だろうか

100年程昔のイギリスの物語らしいが内容は覚えていない


そんな事を思い出しながら私は桜が舞い踊る中真新しいセーラー服に袖を通しとある高校の校門の前で立っている



「此処であってるのかしら」

小さく呟いて風にそよぐ長い髪を耳に掛けた

何度もメモに書いてある学校名と目の前にある学校の名前を見比べる


間違いは無さそうだ


さて、先に進もうかと思った時後ろから声を掛けられた

「ねえ君!可愛いね!見たことない顔だけど…もしかして転校生?」

ニヤニヤと下品に笑う男達が数人なまえを囲うように話しかけてきたのだ
自然と顔をしかめる
こういう輩は無視するのに限る
そう思いなまえは男達の間をすり抜けた

男達の声が耳に触るので急いで校舎に入ってしまおうと足を進めようした時どんっと肩に堅いものがぶつかってきて手に持っていた鞄が落ちた
鞄の中身はぶちまけられたが幸い今日は中身が少ない
小さく溜め息をつくとしゃがみ込み散乱した荷物を集め始めた



「…わりィな」

そう言い差し出されたハンカチ
綺麗に砂を払われている

そうか、こいつがぶつかってきたのかと眉をピクリと動かし、顔を上げた
そこには改造された学ランに学帽をきたえらくガタイのいい男がいた


「いえ…私の方こそ」

すみません、とは言ってやらない
差し出された自分のハンカチを受け取り素早く他に落ちた物を拾い上げた
全てを拾い上げ腰を上げ校舎の方を見ると先ほどの学ラン男の後ろ姿が見えた

その大きな背中を見送っていると遠くの方からこちらを見ながらこそこそと喋っている女子生徒達が居た

妬みが込められたチクチクと痛い視線を四方から浴びながらなまえは先ほどの学ランの男から直感的に何かを感じた



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