Challenger!!
□ Who kill my dear sister?
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Who kill my dear sister?
愛されない王女様と愛されている挑戦者
昔々あるところに......というより、ハートの国にはね、プリンセスがいたんだ。
誰からも嫌われるのか役目だったんだけど、何を運命が間違えたのか「愛されたい」と願っていたんだ。
舞踏会があっても、絶対に招待されない。彼女はハートの城ではなく、城外の館で育てられた。
ムツキが来たときも、そのプリンセスには知らされなくて、近付けさせられなくて、ムツキ自身もプリンセスの存在は知らなかったんだ。
ある時、また運命のいたずらなんだろうかさ、ムツキが向こうの世界からこちらの世界に現れたのは他の役持ちではなくプリンセスの前だったんだ。
「なんで、俺がこんな話をするかって?」
まあまあ、そこに座ったまま聞きなよ。
「ムツキは他の代わりになれる自分が大嫌いだったからな、俺はアンタがやっぱり嫌いだ。
そんなことをさせた、アンタが......」
「『あらあら、これは三月ウサギ。残念なことにお茶会の時間ではありませんことよ?代わりに銃弾でも以下がかしら?』と、読んで銃を構え......って、これは台詞じゃねえ!!ちょっ、エリオット、たんま!待て!お座り!
えーっと、テイクツー!行ってみよう!何事も挑戦だ!」
「誰が座るか、アホ。......本当にあんたってアホだなぁ。代わりに振る舞えても、ムツキに役やんかつとまんねえのにさ」
「そうか?結構様になってると思うぜ!ちゃーんと、オレは嫌われているぜ!さっきも昼飯を持ってきたメイドが皿をわざと落として、昼飯は自分で台所で作らされた!変な台所だったんだよな。コックは手伝わないのに近くにいただけだし、触るなよ?触るんじゃないって振りみたいに言われていた棚には毒があるし」
「それは...アンタが愛されているからだろ、バカ。
今すぐにその代役を止めれば、終わるんだ。早くしやがれ」
「無理無理。オレには無理だってエリオット!
立派に嫌われプリンセスを演じてやるぜ!
嫌われ者の悪い継母は死んで終わるんだぜ
死ぬまで、嫌われは直らない!
......エリオット、私の花舞台を飾ってくれませんか?」
そう言って私が銃を構えると、エリオットは呆れたように髪をかきあげた。
そして、ニヤリと笑って銃を構え返してくれた。
小さなケーキ屋。
妹を亡くしたばかりという若者がやっている店の前に私はいた。
あの余所者、誰もが愛する少年のような少女のような彼女、がここに行けばいいと言っていたけれど、すごく不安だった。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせた。
誰もが嫌うプリンセスは今別の人間が演じている。私がここにいるけれど、ここにプリンセスはいない。
夜の道に店の明かりが落ちる、私を照らす。
閉店準備をしている店のドアをどうやって鳴らそうか悩み、胸の前で手を合わせる。
何度も祈った手。どうか、どうか、愛されますようにって、叶わない夢を願った。
いつまでも店の前にいる私に気づいたのか、内側からドアが開く。怯える私に出てきた若者が、にっこりと微笑んでくれた。
......今まで、誰もそんな風に笑ってくれなかったのにっ、どうして!?
物語ならばもっと、優しい言葉を若者が投げ掛けてくれたのでしょう。でも、ここは時間の国。ルールで縛られた国のなんの力もないケーキ屋。
私を導いたのは魔法使いじゃなくて、愛されることしか出来ない余所者。
「こんばんは。君が僕の妹役の新しい子?」
そう、私はケーキ屋の妹役と思われた。
妹を亡くしたばかりの若者に向かって、私が小さく頷くと、彼は寂しそうに笑い直した。ルールだから、と割りきれないような優しさがそこに見えた。
私がこれから得られるだろう幸せと騙すこと、そして誰からにも愛されるムツキを犠牲にしたことに対して泣き出すと、やっぱり若者......兄さんは理由も聞かずに頭を撫でてくれた。
僕の妹は本当に馬鹿たった。馬鹿に成るほど一途だったから、尚、悲しい。
やめろ、と言ったのに幼馴染みの時計を手放さなかった。最近の時計屋の手伝いの人間は冷酷で残忍たから、きっとお前まで殺されてしまうよ、僕をおいていかないでと言ったのに聞いてくれなかった。
妹が止める僕の手を振り切って、家を出ていってかは数日......嫌われ者が住むという森でやはり殺されてしまったという噂を聞いた。だから、次の役につく人間がすぐに来ると。
噂を聞いて一日もしないうちに、今の妹が店の前にいた。
不安がっている顔はあの子によく似ていた。役なしでもわかるくらい......ああ、そうだ、だから、僕の妹だってわかったんだ。なるほど、なるほど。
「兄さん、モンブラン売り切れそうだわ。どうする?」
「ああ、次ので作ろうか。まだ店を閉めるのは早いしね」
今の妹はすごく賢かった。店に飾る花の名前や言葉を知っているし、不用意に外には出ない。
......はじめの頃は、まるで誰かに見つかるのを恐れているようだったけれど今はそんな陰は見られない。
「こんにちはー!!......あ、いたいた。悪いんだけどさ待ち合わせよりも少し早く着いたみたいなんだ。少し長いになっちゃうけど、席いい?」
「いらっしゃいませ。混んでいる時間でもないので、どうぞ」
ハートの騎士様がやってきた。役持ちが来るなどひどく珍しいが、きっと余所者のどちらかと待ち合わせなのだろう。
新たなケーキを作るために僕は奥へ、妹が彼の接客をした。
「やいやいやい、エース!無理矢理オレに約束させたくせに自分は可愛い店員さんとテーブルを同席かい!てか、仕事の邪魔すんじゃねえ!」
「あはは、ムツキが嫉妬するなんて珍し......ちょっと、待ってくれよ。からかわないからそのまま店から出ないでってば」
「わざわざお前が『兵士にちゃーんと案内されてくるからさ、ケーキ食べにいこう!』って剣を突きつけて来たから来たんだぞ、わざわざ!!」
「......」
「ごめんなさい。ごめんなさい。店員さん、煩くしてごめんなさい。
な?だから、泣かないでよ。騎士の財布だけど売り上げにたくさん貢献するんで」
「そうそう、ムツキの体重にも貢献するんで」
「うっせ。黙れ××騎士!
そうだ、店員さん。このフルーツタルトと紅茶をとりあえずください。
なぁ、なぁ、どうして笑いながら泣いてるんだよ。泣かせたこっちもあれなんだけど、変な店員さんだなあ。
......そういえば、エース。お前んとこの王女様が死んだらしいぜ。てかさ、ビバルディに娘なんていたの?あ、違う?へえ、役があっただけなのか。ん?オレは残念なことに王女には会ったことないぜ。きっとシンデレラみたいに可愛い人だったんだろうな。
......な訳ねえだろ。そんな役なんかオレ見たことねえ」
「そう?」
「プリンセスって言ったら、オレが知ってるのは愛されてめでたし、めでたしって奴だけだ」
(素敵な素敵な可愛いプリンセス?オレが願いを叶えてあげましょう。オレが初めて、この世界で死んだときに残せるのはプリンセスのこれからの、めでたし、めてたしなハッピーエンド!なあ、なあ、頼むよ、プリンセス!!)
(悪いことをした娘は死んで、王女様は余所者によってガラスの靴を脱ぎ去って、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ)