Challenger!!
□Don't cry baby ?
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Don't cry baby ?
-私の言葉が欲しい人は誰ですか?-
「ムツキ?」
「んん?」
先輩に連れて来られた橋の上、そうだ。終電がなくなったから、ひと駅分だけ歩いて近くの女の先輩の家に行こうとしていたんだ。さすがに男の先輩の家には泊めてもらうわけにはいかないって笑っていたっけ?
酔った私を連れて歩くのは、同じく酔った先輩には大変だったようで少し困ったように橋の手すりに寄りかかった私を見ている。ああ、その笑い方、好き。
でも、どうして、先輩……。
熱っぽい目で私を見るの?
久しぶりに……ううん、きっと、初めて。
心臓の鼓動が高鳴った、と思った。
「エリオット!あれが恋なのか!!そうなんだよな!?だって、オレの心臓が初めてどきどきしたぞ!なあ、なあ、エリオット、固まってないでちゃんとオレのこと見てくれよ。一番にお前に教えたかったんだ!あ、ここって……」
「やあ、ムツキ。今はサーカスがやってる時期なんだ。これから始まるから楽しんでいきなよ」
『けけけっ、言いときに来たよな』
「そうなのかよ。オレ、帽子屋のとこで見るからブラッド席をくれ!……って、エリオットさっきからどうしたんだ?こう、空が落ちてきたような顔なんてしてさ。ブラッドは何かわかるか?んー、オレとしては一番の友達に」
「あ、ひよこウサギが凹んでいく」
「恋愛相談をしたかったんだけどさ」
「あ、更に凹んでいくよ、兄弟」
「んー、エリオットが元気ないとすると困るんだよな。おーい、エリオット。エリオットちゃん?エリー?ダーリン?なんつってな」
「……ムツキ、うちのNo.2をこれ以上ないくらい凹ましてくれるな」
「そんなつもりは全然ないんだけどな。
でも、エリオット。本当に祝福してくれよ。祝ってくれよ。オレ、これで母さんが望むような心臓を持っているって証明できるかもしれないんだぜ。恋ってすげえよな」
「あーあ、エリオットもとんでもない暴走少女に振り回されてるよね。エリオット、も、ね」
『けけけ、後でくたばっちまえ、ジョーカー』
「ははっ、ひどいな。俺は誰とは言っていないよ」
「エリオット。エリオット。なあ、聞いてくれよ。エースは茶化すし、ブラッドはにやにやするし、他は騒がしいし、ビバルディなんかはあの人のこと首を跳ねろっていうだろうし。エリオットぐらいしか思いつかないんだ。
オレ、本当にあの人のこと好きだったんだ。心臓が強く脈打ったときに、本当にこの人に一生をあげたかったんだ。……でも、オレの好きよりもあの人は他の人の好きが欲しかったんだ。なあ、また、オレ、恋出来るよな?」
「……ふられたんなら、」
「へ?」
「さっさと言いやがれ!馬鹿野郎!!」
「なな、なな、なんでオレがバカなんだよ!お前がぼけっとしてるから話を進められなかったんだろ?オレは悪くねえよな?」
「僕は知らないよ。そんな子供みたいな喧嘩、今は大人だから知らない」
「うるせーよ、外野。
ムツキ、どーせ、ちょっとときめいたぐらいで直ぐに告白して流されたんだろ?お前の言葉には誠意が足りねえんだよ。ブラッドを見てみろ、一言一句が誠意に満ちて……わ、悪かった。ムツキ、俺が悪かった。だから、マジ泣きすんな。ジョーカーはムツキを抱き寄せんじゃねえよ!死ね!」
「おー、怖い、怖い。ウサギさんの嫉妬は怖いね」
「ウサギじゃねえ!」
「ほら、ムツキ。いくらでも話を聞いてやるから、こっちよこいよ。って、汚ねっ。ちゃんと顔拭け」「……本当はね、エリオット」
(告白をされて、心臓は高鳴った。でも、キスを受け入れるには、私が欲しい人じゃないと駄目みたい)