銃弾レディ

□第1章 銃弾レディ
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「あははっ、ごめん。なんか俺で妄想を始めちゃったのがいたから吃驚してね。ほら、ペーターさんの毒電波で慣れていてもこんなにすごいのは君だけだからね」

爽やかに――――そして、黒く笑うエースに対してクリアは今は丸腰。クリアは背後からの攻撃に軽く身を引いて、グレイの背後に回る。必然的にグレイがエースの剣を受けた。勿論、武器で、だ。

「「私(僕)とこの人(これ)と一緒にしないでください」」

クリアとペーターがハモった。そして、ハモった本人達は互いにむっとした視線と冷たい視線を交わしあう。

「それとエース君、勝手に僕の電波を受信しないでください。僕はアリスに向かって送信してるんです。
ちゃんと受け取ってくれてますよね?僕の愛の電波を」

「受け取ってないし、いらないわ」

にっこり、とハートマークがつきそうな笑顔でアリスに同意を求めたが、視線を逸らされて否定された。

「そんな!!アリス、僕を拒否しないでください!!」

「苦しいから、離れて!!このっ……」

「ぐっ……」

立場が違うからと殴るのを控えようとしていたアリスだったが、あまりの異常度に耐えきれなくなり殴った。


「宰相様は片想いですね。私はエース様と両想いです!!羨ましいでしょう!!」

「そうだ!!トカゲさん、会合も始まる前に終わったみたいだから鍛錬に付き合ってよ。最近、君のところの妹さんのお陰で調子が悪いんだ」

「断る。あと会合は始める。今朝から吐血をしていたナイトメア様だ。ドアの外あたりで倒れてらっしゃる。
クリア、出て来るな」

クリアの発言をエースが無視して、エースの挑みをグレイが短剣で弾いて、グレイに阻まれながらエースに抱きつこうとするクリア。
ややこしいことだが、お互いにお互いの要求を防ぎあっていてある意味での三角関係だ。

「お兄ちゃん、私とエース様の仲を引き裂かないで!!」

「今はお前は丸腰だ。出てくるな」

片手でエースに応戦しながら、器用にグレイはクリアの頭を押さえて後ろに下がらせる。
その様子を見ていたエースは何か思いついたらしく、笑みを深くした。

「トカゲさんと俺の仲を引き裂かないでくれよ」

「な!?お兄ちゃん!!私とエース様の邪魔していると思っていたら、お兄ちゃんもエース様を狙っていたの!?」

ぐっと上着を掴んで、疑惑の浮上した兄の顔を見つめる妹。
彼女にしてみれば、裏切られたようなものだ。

「俺はそっちの趣味はない。騎士、消え……いや、死んでくれ」

「はははっ、訂正したにしては物騒だぜ。まだ頭の中が子供以下の妹さんがいるんだから穏やかに行こうよ。
あっ、もしかして妹さんのこと大切にしてない?だったら、俺が殺そうか?」

「私はどんな理由であろうとエース様に殺さ――――んぐっ!?」

「馬鹿なことを言うな」

嬉々としてエースに殺されようとするクリアの口を手のひらでふさいだ。

「お前もだ、ハートの騎士。例え冗談でも次に、妹を殺すと言ってみろ………その時は」

琥珀色の瞳に炎が灯る。だが、琥珀は溶けることなく熱い決意を溢れさせていた――――殺意という名の。

「その時は?」

対峙する紅い色の瞳は燃えるどころか、冷たい。だが、殺意が冷めているのではなく鋭くなっているのだ。

「――――本気で殺してやる」

戸惑いきっていつの間にか静かになったクリアを下がらせて、双剣を構えた。

「……そう来なくっちゃ」

琥珀色が焼き尽くし砕くのか、紅い色が凍えさせ切り裂くのか。勝るとも劣らない殺意が交わる。

だが……。

「そこまでだ!!」

ナイトメアの声が響いた………エリオットの後ろから。

エリオットは後ろにいるクローバーの塔の主に嫌そうな目線をやり、うんざりと肩を竦める。

「おい、ナイトメア。俺を盾にせずに直接出て言えよ。後、血を吐くな」

「げほっ、げほっ。病人の私にはここまでが限界だ。近くで言って見ろ。私が二人に殺される」

ハンカチで口を押さえながら、ナイトメアがエリオットを盾にしながら騒ぎの真ん中へ近づく。
いくら権力を持つていても、ナイトメアにはこれが精一杯の、まさに血を吐くほどの努力だ。

「夢魔さん、邪魔しないでよ。今、トカゲさんと本気で鍛錬できるんだからさ」

口調は穏やかだが、にこにことした笑顔は薄ら寒いものを感じ、目が笑っていない。

「ナイトメア様、貴方が会合をしっかり進行してくださればこんなことにはならなかったはずですよ」

「う゛っ……わ、悪いのは暴走をしたクリアだろうが!!私は悪くない!!そして、偉いんだ!!」

まあ、確かに。という雰囲気の元、視線がクリアに集まる。
エースもグレイは対峙し続けているものの、刃を交じり合わせてはいなかった。

「お兄ちゃんが邪魔しなかったら、私はエース様と愛の逃避行に行くところだったんですよ。
ね?エース様」

いつの間にか地面に転がっていた銃を持つと、甘えるような声でエースに同意を求めた。

「ありがとう、トカゲさん。地獄への旅路に行かなくて済んだ」

「いや、俺はお前を地獄へ落としたい。独りで、誰にも迷惑をかけずに堕ちろ」

金色の瞳は、黒い影が見えるほど殺気立っていて無表情さがそれを際だたせた。

「あははっ、トカゲさんってば怖いな〜」

「だから、お前たちクローバーの塔での――――」

また戦いになりそうなところで、ナイトメアが全ての勇気と気力を振り絞りエリオットの背中から出てきた。

「え?何?夢魔さん、何か言った?」

「存分に戦え。若さというものはそういうものだ!!」

だが、全てと言っても一般的には少なく、ましてエースを前にしてしまえば微々。
すぐさまエリオットの後ろへ隠れようとするが、彼に避けられてしまう。

「自分の領土ぐらい、堂々としてみろ。ブラッドなんてどこにいようと堂々としているぜ」

それを目にしたアリスが呆れる。

「ナイトメア……あんたね、もっと頑張りなさいよ」

「無理を言うな、アリス!私は偉いが、この二人を前にして平気でいられるほど健康じゃない!!そんなことを言うなら君が止めろ」

「……いやよ」

確かに、とアリスは心の中で同意する。

「やれやれ、か弱い女に押しつけるか……」

「陛下は俺たちのこと止めます?ほら、陛下って“か弱い”とは当てはまらないから」

ビバルディは手に負えない、まして負うつもりもない部下をきっ、と睨みつける。これがエースではなかったら、優秀な処刑人がいれば、首をはねさせるところだ。

「トカゲ、そいつを殺しても罪は問わぬ」

「陛下!酷いですよ!!」

酷い、と口に出したエースよりもグレイが嫌な顔をする。





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