There is no knowing what'll happen in the future

□Her choice and her purpose
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目を開くとそこは青い部屋でした。

「奏?」
「お姉ちゃん?」
詩和依が隣を見ると、奏が驚いた顔でこちらを見ていた。
(そう言えば、あの夢にも奏がいたな。…ってことはこれも夢か?)
そう考えながらこの部屋―ベルベットルームの主であるイゴールの方に目を向ける。
「再び、お目にかかりましたな。貴方がたは、“力”を覚醒したショックで意識を失われたのです。」
「は?力?」
詩和依は思わず聞き返す。
「ほう…覚醒した力は“オルフェウス”ですか。なるほど、興味深い。」
イゴールは詩和依の発言を無視したまま言葉を続け、にやりと笑う。
「それは“ペルソナ”という力…もう一人の貴方自身なのです。」
「どういう意味?」
奏が訊ねる。
「ペルソナとは貴方が貴方の外側の物事と向き合った時、表に出てくる“人格”…様々な困難に立ち向かっていくための“仮面の鎧”と言ってもいいでしょう。」
イゴールの説明はひどく抽象的で捉えづらい。まるで心理学の授業を受けているような気持になってくる。隣の奏はあまりよく分からないようで、少し困ったような顔をしていた。
(そして…話、長い…)
ペルソナの説明とか、コミュニティーを創って絆を紡げとか、絆がペルソナをするだとか、老人の話は延々と続く。
「―よくよく、覚えておかれますよう。」
イゴールはそう言って説明を終える。
「さて…貴方がたのいらっしゃる現実では、多少の時間が流れたようです。これ以上のお引止めは出来ますまい。」
老人の言葉とともに奏の姿が消える。
「どうなってんだ!?奏は!?」
突然のことに、詩和依は驚きを隠し切れず、声を荒げる。
「ご心配めされるな。もう1人のお客人には先に帰っていただいただけですからな。」
「…私だけに用があるってこと?」
詩和依は小さく息を吐き、自身を落ち着かせてから訊ねる。
「貴方はまた別の運命を負った、特別な存在。その存在が物語をどう変えていかれるか…私も楽しみにしております。」
「特別?どういう意味?」
「今度お目にかかる時は貴方がたは、自らここを訪れる事になるでしょう。では…その時まで。ごきげんよう。」
「ちょっと!?まだ質問に―」
イゴールの姿は遠のいていく。
(―答えてもらってないんだけど!!)
意識は部屋を飛び出し、暗闇に溶けていった。

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