あいまいもこ

□あくいんあっか
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「ゴアァァァッ!?」
いきなり、虚は吹っ飛ばされた。
「あ…当たった…のか…?」
虚を吹っ飛ばしたのは茶渡の拳だ。ルキアの声を聴きつけて助けに来たのだ。
その後は、見当違いの場所を殴っているので、虚の姿が見えているわけではないようだ。
「…よし、あたった…」
だが、勘が鋭いのか茶渡の拳は再度虚を捉えた。
その光景をルキアは驚愕していた。
姿が見えず、声も聞こえない相手、ましてやその相手には大怪我を負わされている。なのに、茶渡は平然と虚に立ち向かっていく。
(こいつには…恐怖心というものがないのか…?)
「く…くそ…ッ」
虚の苛々とした呟きがルキアの思考をそこで中断させた。
「な…ッ」
バサリ、と羽を広げた虚が上空へと飛んだのだ。
手も足も出ないだろう、と言いながら虚は二人を見下し、嘲笑う。
「ボーッとするな!逃げろ!!奴は飛んだ!!」
状況を理解していない茶渡に向かってルキアは叫ぶ。
「…転入生…あんた…ユウレイ見えるのか…?」
「そんなことは今どうでもいい!とにかくあの距離ではこちらの攻撃は届か―」
「…どこだ?」
ルキアの言葉を遮り、茶渡は訊ねる。
「…何?」
「…飛んでるんだろ…どっちの方向だ…?」
「そ…そんなこと聞いてどうす―」
ルキアは言葉を途中で止めた。というよりも茶渡の行為に驚き、声を詰まらせた。
茶渡の腕は近くにあった電柱を抱いていた。
「−こうする。」
そう言った茶渡は雄叫びを上げながら電柱をへし折った。
その行為には虚も驚き固まった。
「…さあ…どっちの方向だ?」
その台詞で我に返ったルキアは即座に指示を出す。
「そ…そのままだ!!そのまま振り下ろせ!!」
ブン、と風切り音を鳴らしながら電柱は虚を地面へと叩き落とす。
「さあ観念しろ。じき貴様を片付ける奴がここへ来る。それまで大人しくしているんだな。」
地面に倒れた虚を見下ろし、ルキアは言う。これで決着がついた、と思っていた。
「…ヘヘヘ…」
「…何が可笑しい?」
いきなり笑い出した虚にルキアは眉を顰める。
「考えねーのかなーと思ってよ…どうして俺がいままで…二体もの死神を倒して食うことが出来たのか、ってことをよ…」
どういう意味かと考えるルキアをバカにするように虚は言葉を続ける。
「まったく…そんなコトだからアンタら死神は…どいつもこいつも“俺達”にヤられちまうんだぜぇ!?」
虚の言葉と共に十数匹の小さな虚―小虚がルキアと茶渡へと飛びかかった。
「形勢逆転ってヤツだなァ、オイ?」
小虚によって地面に押さえつけられ身動きが取れなくなった二人を虚は笑う。
「さァ〜てどっちから喰ってやろうかなァっと!!やっぱマズそーな男は―」
勝ちを確信し、余裕たっぷりな虚の言葉を茶渡の雄叫びがかき消した。
「なにエーー!?」
小虚の抑え込みを力任せに解除した茶渡に虚は驚きの声を上げる。
「ななな何てムチャクチャな奴だ!!何から何まで筋力にモノ言わせて片付ける気か!この筋肉バカ―めェッ!?」
茶渡を罵る虚に再度茶渡の拳が迫る。
「く…くそッ!!なんつーカンの鋭いヤツだ!!見えてねェくせに!!
「こっちだ!チャド!!私の上を蹴ってくれ!!」
茶渡の攻撃をギリギリで交わした虚が焦っている隙にルキアは茶渡を呼び、上に乗っていた小虚を一掃してもらう。
その様子を見ていた虚は地上では敵わないと思ったのか再び空に飛びあがる。
「違う!そっちではない!!奴はまた空に逃げた!!」
「空…!」
「安心しろ。私に考えがある!」
見当違いの所を殴り続けていた茶渡を止め、ルキアはある作戦を提案する。
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