あいまいもこ

□あくいんあっか
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今回の事の発端は一護の同級生である茶渡泰虎だ。何故か彼は虚に追われていた。そして、他の人間を巻き込まないように、と考えてか、鸚哥と共に、ルキアから逃げている。
(くそっ、追いつけん…!義骸でなければ、この程度のスピードどうということはないのに…)
一人で茶渡を追うルキアは義骸を造った技術開発局への半ば八つ当たり的な文句を心の中で呟く。一護は途中で会った酷く具合が悪そうだった妹の夏梨を家へと送っている。
「いい匂いがするなァ…!」
後ろから声がした。
振り向くとすぐ近くに白い仮面があった。虚だ。
「アンタ、スゲーうまそうな匂いだ…喰わせてくれよ…その魂!」虚が目を細める。
(しまった…!追うのに気をとられて、背後を…)
虚の大きな手のひらがルキアへと振り下ろされる。
反応が遅れ、避けることが出来なかったルキアの体は地面へと叩きつけられた。咄嗟に左手を地面へとつき、勢いを殺して着地する。アスファルトがルキアの膝を削る。
「へぇ…一発では死なねえか。なかなかやるじゃねえの。…それにアンタ、俺が見えてるみたいだしよぉ…一体何者―」
虚の言葉を膝蹴りで遮ったルキアは仮面の端を掴んで自らの体を持ち上げ、相手の背に立つ。
「君臨者よ!血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ!真理と節制、罪知らぬ夢の壁に、僅かに爪を立てよ!!」
そう唱え、虚の背を蹴って、その勢いで後ろへ飛ぶ。
「破道の三十三!!蒼火墜!!」
虚に向かって突き出したルキアの左の手のひらから青白い光の弾が打ち出される。
(撃てた…!!よし!これくらいの鬼道を撃つ力は戻って―)
その考えが間違いであったと白煙が晴れた瞬間に気づかされた。虚は無傷だったのだ。
(莫迦な…無傷だと!?)
信じられない面持ちで虚の方を見る。
「へへ…今の術、知ってるぜ…死神の術だ!そうだろ!?だけどアンタのは弱いなァ…!スカスカだ!」
虚はニタニタ笑いながらルキアを見下ろす。
(くそ…!やはりまだあのレベルの鬼道を使えるまでには回復していなかったか…)
力の無さを実感しながらも虚を睨みつける。
「そうか…アンタ、死神だったのか。どうりでうまそうな匂いがするワケだ…。死神か…なつかしいなァ。俺はな、あのガキを成仏させに来た死神を、二人ほど喰ったことがあるんだ…。最高にうまかったなァ…。」
虚はジュルリ、とわざとらしく涎を啜る。
「あの餓鬼とは…鸚哥に入っている霊のことか…!」
「そうだ…」
「貴様は、どうやらその餓鬼をしつこく追い回している様だな…何故だ?」
「さてね…アンタがおとなしく俺に喰われるなら教えてやるよ…」
クックッ、と虚が笑う。もちろんルキアにそんな気はない。
「貴様…!」
ルキアは、虚へと向かっていくが、人間と同じ身体能力で敵う訳がない。
「アンタ、弱いなァ…ホントに死神か?その人間のカラ脱いだらどうだ?え?」
そう言いながら、虚は大きな手でルキアをブロック塀に押し付ける。足が地面に着かず、息が詰まる。虚の手に更に力が込められ、苦しさは増していくばかりだ。
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