後藤さんの休みが急に決まった。 私はたまの休みだからゆっくりしようと言った けれど、後藤さんは紅葉の中を車を走らせて行 く。

「何処に行くんですか?」

「もうすぐ着く」

暫く走り、着いたのは紅葉の山から流れ落ちる 滝だった。 圧倒的な美しさに目を見張る。

「綺麗…」

「アンタと見たかった」

不意に後ろから抱き竦められ、ドキンと胸が高 鳴る。

「寒くないか?」

「はい…」

本当は、嬉しくて、恥ずかしくて、照れ臭くて 、暑いくらいだけど… 火照った頬を撫でる冷たい風が心地良い。

「冷える前に車に戻るか?」

「もう少し、このまま…」

「そうか」

いつまでも覚えていたい。 冬に近い秋の日に、後藤さんと見たこの景色を…






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